金太郎飴の老舗 統一感ないパッケージ一新で劇的復活
明治初期創業の金太郎飴本店(東京・台東)。看板商品の金太郎飴以外にも抹茶あめ、あんずあめなどの商品アイテムをもっている。唯一の直営店である本店では金太郎飴以外のあめもよく売れるが、百貨店の「全国銘菓コーナー」や「大江戸物産展」といった催事など、他社製品と一緒に置かれる売り場での金太郎飴以外の売り上げに課題を抱えていた。
課題:パッケージのデザインに統一感がない
金太郎飴本店の高野裕代さんは、「パッケージのデザインがバラバラで統一感がなかったため、当社のあめだと分からず手を伸ばす方が少なかった。催事場などでは、金太郎飴以外のあめは出品を断られることもあった」と語る。
例えば、抹茶あめのパッケージは、千社札風シールに「抹茶飴」の文字が印刷されているだけ。袋の裏を見なければ、金太郎飴本店製とは分からない。
同社ではそれまで、パッケージをデザイン会社などに依頼することはなかった。新商品を出すときは出入りのシール会社に「今度、抹茶あめを出す」などと伝えるだけ。シール会社がそれらしいデザインと書体で制作し、印刷してきたものをそのまま使っていた。
商品に統一感がないのはよくないとの懸念は持っていた。しかし、デザイン会社につてはなく、誰に相談したらいいか分からないまま時だけが過ぎていった。
検討:トータルブランディングを依頼
そんな金太郎飴本店の背中を押したのは歌舞伎座だった。2014年7月、前年に新装オープンした歌舞伎座から、土産物コーナーに置く商品が欲しいと連絡が入った。現在どんな商品が置かれているか見にいくと、歌舞伎の隈取りをモチーフにしたあめのパッケージが目に留まった。「和のテイストを生かしたデザインが素晴らしく、これをデザインした会社に相談したいと思った」(高野さん)
インターネットで検索するとデザインコンサルティングファーム「DONGURI」のデザインと分かり、すぐ連絡した。
同社には、シールのリニューアルではなく、包材などを含め、全商品をトータルでリニューアルしたいと伝えた。具体的なイメージとしては「和紙で包装して帯掛けした、贈答用に使える見栄えのするパッケージ」(高野さん)だ。
この依頼を受け、DONGURIのチーフクリエイティブオフィサー、五味利浩氏は、「贈答用もいいが、100年続く歴史や、金太郎飴の良さを世の中に広く伝えるデザインプランを展開すべき」と提案。後日、和紙包装タイプの他に、普段使いに向いた明治レトロタイプ、遊び心をくすぐる金太郎の腹掛けタイプの3種のデザインを制作し、金太郎飴本店に持参した。3種のうち、どれか1種が選ばれるものと思っていた。
実施:金太郎のモチーフを横展開し統一感を確保
金太郎飴本店の回答は、「全部採用したい」だった。3種共に金太郎のモチーフを採用し、統一感を出していた。「同時に、用途ごとにパッケージが違うことで販売機会が増えると思った」(高野さん)
新パッケージは14年10月から販売開始。納品すると百貨店などからあめの種類を増やすことを求められた。そこで、それまで千歳あめ袋にしか入れていなかったべっこうあめを新商品として販売したところヒットにつながった。
旧パッケージは昔からの常連客のため、本店で継続販売している。これらが奏功し、売り上げは全体で1.5~2倍に伸びたという。
(ライター 原武雄)
[日経クロストレンド 2018年11月27日の記事を再構成]
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