定年したら「友達100人できるかな」 100年人生の安心
臨床心理士の東畑開人氏(下)
東畑開人氏(右)と石川善樹氏
臨床心理士の東畑開人氏は、十文字学園女子大学の講師を務めるかたわら、ヒーリングなどの民間療法を取材するなど、「心の治療とは何か」を様々な角度から研究している。ビジネスパーソンにとっても終身雇用の崩壊やグローバル競争の激化で、日々のストレスは増している。人生100年時代を生き抜くには、心の安らぎをどこに求めていけばよいのか。予防医学研究者の石川善樹氏と解決策を探った。
「転職できるだろうか」という慢性的な不安
石川 いま日本人が漠然と抱えている不安の根源には「先が長い」ことがあると思います。70歳まで生きれば長生きといわれた時代には、55歳で定年になると残りは15年でした。しかし人生100年時代になると、定年が70歳になっても残り30年も生きなければいけない。当然、働く期間も長くなります。
東畑 企業で働く人にとっては、必ず一度や二度は転職をする時代になりますね。常に「プレ転職」の状態です。ところが多くの日本人は転職に慣れていないので、「転職できるだろうか」「給料が大幅に下がるんじゃないか」と不安になる。一方、転職しないで会社にずっといることにも罪悪感を持ってしまう。そうしたさまざまな不安を抱え、メンタルをやられる人も実際にいます。
石川 いっそ、早い段階で決断した方がよいかもしれませんね。定年まで残ってリタイアした人と、早期退職して別の職場を体験してからリタイアした人とでは、後者の方が人生に対する満足感が大きいという話を聞きました。早期退職して全く別の世界にチャレンジし、新しい仕事や新しい人間関係に適応できたことがすごく大きな自信になるそうです。
東畑 そちらの道を行くか、逆に開き直って最後まで会社に居座るかでしょうね。お荷物と言われようが気にせず、ずぶとく生きるのも一つの方法です。真面目な人ほど、ダメ人間だと思われたくない心理が働き、何かやりたくなるものですが、かえって悪循環にはまるケースもあります。そう思うと、日々の生活の中に楽しみというか、複数の軸を見つけることも、心の健康にとっては大事ですね。