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マセソンさんのパラフレーズ

靴は置くか、手渡すか 「気づき」が示す社会の成熟度 マセソン美季

2018/12/14

車いすで靴が脱げたら……(写真はイメージ)=PIXTA

11月末から、各国オリンピック委員会連合(ANOC)総会、国際オリンピック委員会(IOC)理事会など2020年東京大会に関わる大きな会議が立て続けに東京で開催され、オリパラ関係者が多数来日した。バッハIOC会長は「大会開催1年8カ月前という時期に、東京大会の準備状況は過去の組織委員会に類を見ない素晴らしい出来だ」と絶賛した。

12月2日には日本パラリンピック委員会が「すごいぞ!パラリンピック」絵画作文コンクールの受賞者を発表した。作品を間近で見た国際パラリンピック委員会(IPC)のパーソンズ会長は「子どもの感性で、パラリンピックの魅力を発信することには大きな意義がある」と作品から伝わる迫力や躍動感に感動した様子。「子どもたちが既にパラリンピックの価値を理解、発信してくれているから、東京大会の閉会式では、これまでにない最高の大会という講評を言えるのでは」と早くも花丸の評価だった。

期間中、IPCのゴンザレス最高経営責任者(CEO)とともに車で何度か移動した。その際、「まるでグリム童話のシンデレラだな」と彼から言われ、お互いにクスッと笑いあうことがあった。

車から車いすに乗り移るとき、履いていたパンプスが脱げた。運転手さんが靴を取って、車いすの前の地面に置いてくれたが、すかさずゴンザレスさんがパンプスを拾い上げ、私に手渡す。一瞬けげんそうな顔をした運転手さんだったが、私が自分の動かない足に靴を履かせている姿を見て、「あっ、そういうことか。勉強になりました」と話した。

履きやすいように地面に靴をそろえて置くのは、とても自然な行動だ。ところが、普通に足を入れて靴を履けない私を知っているので、ゴンザレスさんは靴を渡してくれたのだ。

様々な人と接することで、このような経験を通した気づきはどんどん増えていく。東京大会開催までの間に経験値を増やして、さりげなく、スマートな配慮ができる人がたくさん現れてほしい。それでこそ社会の成熟度が測れるように思う。

マセソン美季
1973年生まれ。大学1年時に交通事故で車いす生活に。98年長野パラリンピックのアイススレッジ・スピードレースで金メダル3個、銀メダル1個を獲得。カナダのアイススレッジホッケー選手と結婚し、カナダ在住。2016年から日本財団パラリンピックサポートセンター勤務。

(「マセソンさんのパラフレーズ」は毎月掲載します)

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