SNSだから本音トーク バド奥原さんのファン交流術

不慣れな英文を書き連ねるうちに、新たな発見もあった。「細かく表現を考えないと英語って書けない。日本語よりも思いの本質までたどり着く」。考えが整理され、今何を自分が目指しているのか、明確に分かるようになってきた。

炎上などのトラブルを警戒し、最近はプライベートな投稿は自制気味だ。だが本音は「ニュースなどで感じたことがあれば、もっと発信したい」。憧れるのは本田圭佑さんやダルビッシュ有さんのように、時にファンとSNS上でぶつかってでも自らの意見を通す姿。「私が発信することで、同じ意見を持っていても言いにくかった人が、自信をもってもらえればいいなと思う」

特にファン層の拡大を心がけてきたわけではないが、東京五輪に向けて競技のアピールを増やす必要性も感じている。「試合で活躍して自分の知名度を増やして、検索してもらえれば」。飛び込んできたフォロワーとの交流を楽しみ、時に寄り添いながら、一緒に金メダルへの道を歩んでいく。

IOCは選手に推奨、若者を意識

組織委はツイッターやフェイスブックなど複数のSNSを使い分けている(東京都港区)

五輪で本格的にソーシャルメディアが活用されるようになったのは、2012年ロンドン大会からだ。若者へのアプローチを重視する国際オリンピック委員会(IOC)も、アスリートのSNS利用を奨励し、大会組織委員会も国内外に向けた情報発信で積極的に活用している。いまやSNSは、機運醸成に欠かせないツールとなっている。

2020年東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の公式ツイッター「Tokyo2020」(日本語版)は11年6月に開設。フォロワーは27万人を超え、今も増え続けている。

「スタート時のフォロワー数は150人だったので感無量」と、アカウントを立ち上げた組織委の高谷正哲スポークスパーソン。1人で始めた組織委のSNSは今は5人のチームで運営している。

屋外で大会マスコットを撮影する組織委のSNSチーム(東京都港区)

手掛けるのは、ツイッターのほか動画サイトの「ユーチューブ」や、写真共有サイト「インスタグラム」、中国版ツイッターの「微博(ウェイボ)」など。選手インタビューや五輪音頭の振り付け、日本の紅葉の風景など取り上げる内容は多彩で、「あらゆるプラットフォームを使い分け、興味がある人にリーチする」(高谷氏)のが狙いだ。

最も反響が大きかったのが大会マスコットの選考。決定時のツイッターは日英いずれも1万リツイートを記録、マスコットのデビュー動画のユーチューブ再生回数は20万回を超えた。

IOCから事細かな注文や指示を受けていると思いきや、「共感できるストーリーを伝えてほしい」との要望程度。コンテンツは基本的に組織委に任されているという。

IOCは従来、選手の大会期間中のメディア活動は禁じてきた。だが、08年北京でブログ投稿を認め、12年ロンドンからSNS奨励へ方針転換した。それでも利用には注意が必要だ。

差別や中傷は厳禁、炎上リスクも

IOCは五輪期間中のSNSについてガイドラインを示していて、政治、宗教、人種にまつわる宣伝活動や差別的や中傷的表現を含んだ投稿は禁止。ロンドン大会ではギリシャの陸上選手らが不適切投稿で選手団から追放処分を受けた。

莫大な契約金を払うスポンサーの権利を保護するため、選手が支援を受ける企業の商品やサービスに関する投稿も禁じている。「友人や家族、支援者と体験を共有したり、コミュニケーションを取ったりする場合に限られ、営利目的や宣伝目的では利用できない」(IOCのガイドライン)。動画の投稿も放送権との関係で注意が必要だ。

身近になればなるほど、SNSにまつわるリスクも高まる。不用意な投稿によるトラブルを避けるため、日本オリンピック委員会(JOC)や競技団体は注意喚起している。投稿のグレーゾーンは差別表現などにとどまらない。例えば、選手が深夜の時間帯に投稿したり、会食を楽しむ写真をアップしたりしても批判を招く可能性がある。

「選手にとっても競技にとっても発信力は魅力で、いまは自ら応援してもらえる環境を作り出せる時代でもある。読んだ人がどう受け取るか、そこまで考えながら発信しないといけない」とJOC担当者は話す。

(堀部遙、岩村高信、山口大介)

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