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オリーブオイル選ぶコツ 表示・色より生産者が肝心

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日経Gooday(グッデイ)

近年、健康面から様々な油に関心が集まる中、最も広く日本人の生活に浸透してきたのはオリーブオイルだろう。日本で見る商品はほとんどが輸入品だが、その輸入量はこの10年(2008~17年)で1.8倍に達し、年間輸入額は350億円を突破(財務省貿易統計)。家庭用油市場トップのキャノーラ油に、金額ベースで迫る市場規模になっている。しかし、様々な商品を見かけるようになり選択肢が増える一方で、「選び方が分からない」という消費者は多い。そこで、日本オリーブオイルソムリエ協会理事長・多田俊哉さんに、日本で主流の輸入製品を軸に、オリーブオイルの選び方と保存法、使い方について聞いた。

オリーブオイル市場が拡大してきたのは、その健康効果への期待が大きいと言っていい。特に、消費者が注目するのは「エキストラバージン・オリーブオイル」。オリーブオイルの中でも最高品質の規格で、「なんとなく健康にも良さそう」と感じている読者は多いはずだ。しかし、エキストラバージンが具体的にどういうものを指すかを知る人は少ないだろう。そこで、まずはオリーブオイルの種類から整理してみたい。実は想像以上にこれが複雑なのだ。

健康効果が期待できるのはエキストラバージン

通常、食用オリーブオイルには、「バージン・オリーブオイル」という分類の油が使われる。国際オリーブ協会(IOC)の規定によれば、これは油を変質させない条件下で機械的、物理的手段のみにより果実から油を抽出したもので、洗浄、遠心分離、ろ過、デカンテーション(上澄みオイルをすくい取るなどの油水分離法)以外の処理を経ていないオリーブオイルのこと。「つまり、生の果実から作る"一番搾り"のようなものです」と多田さんは解説する。

そう聞くと、バージン・オリーブオイルは基本的にすべて「上質のオイル」に思えるが、実際はこれには4つの種類があり食用と非食用に分かれる。

最上級のものが「エキストラバージン・オリーブオイル」(酸度0.8%以下、風味欠陥なし)、次が狭義の「バージン・オリーブオイル」(酸度2.0%以下、若干風味欠陥あり)で、食用はこの2種のみ。その下のランクとなる「オーディナリーバージン・オリーブオイル」(酸度3.3%以下、風味欠陥あり)、「ランパンテバージン・オリーブオイル」(酸度3.3%超、同上)は、いずれも日本では非食用だ(日本で販売される食用オリーブオイルの規格基準はJASが定めた「酸度2.0%以下」をクリアした「オリーブオイル」、もしくは酸度0.6%以下の「精製オリーブオイル」)。

ただし、非食用油も精製されることで「精製オリーブオイル」(IOC基準では酸度0.3%以下)となり食用とされることもある。日本でよく見かける「ピュアオリーブオイル」と呼ばれる油は、この「精製オリーブオイル」にバージン・オリーブオイルを混ぜたものだ。

こうした中、健康効果が特に期待できるのは、エキストラバージンだと多田さんは指摘する。なぜか。健康に寄与するオリーブオイルの成分は大きく分けて2つ、オレイン酸とポリフェノールだが、「バージン・オリーブオイル以下の油ではポリフェノールの含有量が減り、これに由来する特有の辛み、苦みがほぼ感じられなくなるほど」だからだ。

抗酸化成分であるポリフェノールには、悪玉コレステロール(LDLコレステロール)を酸化から守る働きがあり、2011年には、欧州食品安全機関(EFSA)が、オリーブオイルに含まれるポリフェノールの抗酸化作用に関する健康機能表示を許可した[注1]

[注1]https://www.efsa.europa.eu/en/press/news/110728

一方のオレイン酸はオリーブオイルの主成分。オレイン酸などの一価不飽和脂肪酸は酸化しにくいため加熱調理に向き、善玉コレステロール(HDLコレステロール)の値を下げず悪玉コレステロール(LDLコレステロール)値を下げる働きがある。

ポリフェノールやオレイン酸が豊富なエキストラバージン・オリーブオイルをたっぷり使った地中海食が動脈硬化や心臓病のリスクを減らすことはよく知られており、最近では、エキストラバージン・オリーブオイルが認知症予防につながることを示す研究も報告されている。

多い偽物!「認証」「色」「酸度」のどれもアテにならない

さて、健康効果を期待して、エキストラバージン・オリーブオイルを選ぶというだけであれば、一見簡単なように思える。ちまたにはこの表示がある輸入製品があふれているからだ。ところが、ここに厄介な問題がある。「エキストラバージンとの表示がある場合でも、それ以下のバージン・オリーブオイルや精製オリーブオイルが混ぜられているなどの偽物がほとんどで、本当に基準を満たすものは2割もない」からだ。

「日本にはそもそもエキストラバージン・オリーブオイルに関する法規定がないので、表示は生産者任せになる。海外製品は本来ならIOCや各国の基準などに準じて表示されているはずですが、認証には第三者ではなく生産者自身も関わっているため、エキストラバージンを少し混ぜただけの低品質の油を最高グレードとして表示する例などが後を絶たないのです」。そのため、知らない生産者による製品の瓶やそこに表示された情報を見ただけで品質を判断するのは、プロでも不可能だという。

例えば、酸化を防ぐために暗い色の瓶を用いている――良い油の選び方として紹介されることが少なくないが、「中には、きれいな油の色を見てほしいと、わざわざ透明な瓶を使う高品質エキストラバージンの作り手もいます」と多田さんは指摘する。ただし、光による酸化を防ぐためこれらは必ず箱などに入っているので、むき出しの透明瓶に入った製品は避けるべきだろう。

また、油の色も品質の基準にはならない。オリーブオイルのテイスティングを行う際は、色による先入観を持たないよう濃い青色グラスが使われるほどだ。それでも、辛み、苦みがエキストラバージンが含有するポリフェノールの特徴であるがゆえに、いかにもポリフェノールをたっぷり含んでいそうな鮮やかな緑色の油の方が高品質だと思っている人は多い。しかし、実際には品質と色は関係なく、「むしろ、いいエキストラバージンは黄色いものが多い」そうだ。

加えて、しばしば瓶に記載されている「酸度」についても、指標にならないと多田さんは説明する。これは、IOCが定めるエキストラバージンの酸度0.8%以下という基準がもとよりゆるいためだ。「酸度が低いということは、新鮮さを表しているのでは」と思ってしまうが、バージン・オリーブオイルのレベルでもエキストラバージンの基準に収まる数値になるものも多く、非常に低い酸度が表示されていても風味に欠陥があるケースが少なくないという。

品質の優れたエキストラバージンであれば、酸度の表示がラベルに大きく表示されていなくても、IOCの基準をはるかに下回る値でクリアしているという。「酸度の値がきちんと記載されていて、それが低ければ低いほどいい」というのはシロウトの思い込みのようだ。

風味の良しあしは何で決まる?

ちなみに、「風味に欠陥がない」ことは、先ほどの表にもある通り、エキストラバージンの条件の一つだが、そもそも「風味に欠陥がない」「ある」とはどういうことだろう。

オリーブの実は傷みやすく、収穫後なるべく早く、できれば12時間以内に搾油しなければ、腐敗や、発酵が進んでしまう。「広大な畑を持つ生産者でも、収穫後すみやかに搾油所まで運び、2時間ほどで搾油を終えないとエキストラバージンとなるようないい品質の油はできません。そのため、収穫期になると収穫して搾油するという作業を24時間続けるような状態になり、これが1、2週間にわたるという過酷な現場になります」。一方で、こうした手間を避ける生産者は、摘んでから何日分かため置いたオリーブから油を作る。こうしたことなどから、完成した油からは酸っぱい香りやカビ臭さがまとわりつくようになる。つまり「風味に欠陥あり」となるわけだ。

どんな生産者が作っているかに注目

そうしたわけで、勘のいい方であればすでにお気づきだろうが、商品を選ぶ際の一番の目安は「生産者」だ。「生の果実を用いて作るオリーブオイルは、言ってみればワインと同じ。手間を惜しまず作る生産者は、いつも安定した質の製品を作る」からだ。これと思う生産者と出会うためには、専門家のいるショップで相談したり、日本や海外で開かれるコンテストの入賞者を参考にしたりするのが近道だ。コンテスト入賞者の製品の多くは瓶にその旨が記されるので店頭でも探しやすい。

「ただし、中には過去の栄光にあぐらをかいている生産者もいるので、古い受賞歴ではなくなるべく新しい受賞の表示をしている製品を選ぶようにしてください。『エキストラバージン』と名乗るだけでは差別化できないオリーブオイルは、受賞が生産者にとって大きな販促に結びつくので、同じ生産者が毎年のように色々なコンテストに出品します。秋に収穫された果実は春にはオリーブオイルとして店頭に並び、コンテストはだいたいその頃開催されるので、春以降に買うならその年の入賞者を選ぶのがベストでしょう」

エキストラバージン・オリーブオイルの中には、1本で数千円、1万円とするような高額なものもあるが、「値段が高いからいいというわけではありません。ただ、先に説明したような手間暇をかけて作るので、極端に安いものはまずない。価格は正直目安にはなりませんが、あえて金額を明示するとしたら、ポリフェノールの含有量が多いトップレベルのエキストラバージンならば、250ミリリットル瓶で2000円ぐらいから上が価格の目安です」と多田さん。日常使いの油としては少し値の張る買い物だが、日本の厚生労働省にあたる米食品医薬品局(FDA)の指標によれば、毎日大さじ2杯をとるだけでも心臓疾患の予防が期待できるという。

「本物のエキストラバージンの世界はワインのように豊かです。メロンのようにフルーティーで甘いものがあるかと思えば、驚くほど辛いものもある。品種もバラエティーに富んでいるので、異なった品種を比べると味の違いが分かりやすく面白いですよ」と多田さんは楽しみ方を提案する。

風味の違いを実感するためには、100ミリリットルぐらいの小さな瓶を複数そろえるのも一つの方法。色々な油を実際に比べることで、風味の微妙な個性の違いも次第に分かるようになるという。多田さんによると、風味の特徴が一番よく分かる料理は、エキストラバージンと塩をかけただけのパスタだそうだ。

ちなみに、少し生臭くなってしまった刺し身も、エキストラバージンを少量振りかけるだけでグレードアップするという。「肉に合うもの、魚の味を引き立てるものなど風味の違いが分かると楽しみが広がります。ぜひオリーブオイルを使い分けてほしい」

エキストラバージン・オリーブオイルは加熱してはいけないという誤解もあるが、先述した通り、酸化に強い油であるため、火を使った料理に用いるのもOKだ。

最後に気を付けたいのは保管方法。いくらいいエキストラバージンを手に入れても、保管が悪ければあっと言う間に酸化してしまう。家庭で気を付けたいのは、次のような項目だ。

●冷蔵庫に入れない――油が固まってしまう。常温下でも自然には元の油の状態に戻らないため、使用するには30℃以上まで温める必要があり、これを何度も繰り返すとどんどん酸化してしまう。

●ガス台の周囲、流しの下に保管しない――いずれも、繰り返し熱を帯びることで酸化が進んでしまう。流しの下はお湯を使うことなどで意外に暖かくなりやすい。理想的な保管場所は床に近い涼しいところ。生産者のタンクは大方15~18℃で温度コントロールされているので、それが管理温度の目安。

●光が入らないようにする――透明瓶に入っているものは、放っておくと2、3日で光により酸化してしまうため、瓶が入っていた箱に入れて保存するかアルミホイルを巻いておく。

健康効果だけでなく味わいの楽しみもイメージすることが、エキストラバージン・オリーブオイル選びのコツとなりそうだ。

(ライター 大塚千春)

多田俊哉さん
日本オリーブオイルソムリエ協会理事長。日本油化学会会員。国際基督教大学卒業後、モルガン銀行、JPモルガン証券、大手食品商社を経て、大前研一氏主宰の大前・ビジネス・ディベロップメンツ設立にともない執行役員として経営参画。2009年日本オリーブオイルソムリエ協会設立。海外の主要オリーブオイルコンテスト審査員を歴任し、2012年より日本初の国際オリーブオイルコンテスト「OLIVE JAPAN」を開催。著書に『そのオリーブオイルは偽物です』(小学館)など。

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