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長期休暇は引き金になりやすい ゲーム依存に注意

ゲームと病気(上)

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NIKKEI STYLE

日経Gooday(グッデイ)

インターネットやスマートフォンの普及により、私たちの生活に深く入り込んでいるオンラインゲーム。いつでも、どこでもできる気軽さから、子どもから大人まで、やり過ぎで日常生活に支障をきたす「ゲーム依存」に陥る人が増えている。年末年始などの長期休暇は家でゲームに興じる時間が長くなりやすく、依存に引き込まれるリスクも高まるという。「うちの子、ゲームばかりしているけれど、大丈夫?」と気になったら、早めの対策が肝心だ。2011年に日本初の「インターネット依存専門外来」を開設した久里浜医療センター院長・樋口進さんに、ゲーム依存症とはどんな状態を指すのか、脳ではどんなことが起こっているのか、ゲーム依存症になりやすいリスク要因などについて聞いた。

ゲーム依存は深刻な健康問題

通勤時間やちょっとした暇つぶしに、スマートフォンで気軽に始められるゲーム。やり続けるうちに、半ば無意識に手を伸ばそうとしていた、空き時間だけでは物足りなくなってきた、という人は少なくないだろう。「依存症になるのはごく一部の人」「自分はゲーム時間をコントロールできている」と思っている人もいるかもしれない。しかし、ゲーム依存はもはや一部の愛好家だけの問題ではなく、誰もが陥る可能性がある深刻な健康問題に発展している。

世界保健機関(WHO)は、ゲームのやり過ぎで日常生活が困難になる状態を「gaming disorder(ゲーム障害)」という新しい疾病名で、2018年改訂の国際疾病分類(ICD-11)の最終草稿に収載した。これを受け、WHO加盟国は自国での適用に向けた準備をすることになっており、ICD-11は2019年の世界保健総会で承認されれば適用される。

この最終草稿によれば、「ゲームの頻度や時間を制御できない」「日々の活動よりゲームを優先する」「問題が生じてもゲームを続ける」などの行動パターンが見られ、「それらが少なくとも12カ月続いている」「そうした行動によって家族や社会、学業や仕事に著しい支障が起きている」といった場合に「ゲーム障害」と診断される(ただし、重症な場合は12カ月より短くてもそのように診断される)。

一つの病気(依存症の一つ)として認識されつつある「ゲーム障害」。ここでは一般に分かりやすい「ゲーム依存」という言葉を使うが、このゲーム依存の日本での実態はどうなっているのだろうか。厚生労働省研究班(代表・尾崎米厚鳥取大教授)が全国の中高生を対象に行った調査によると、2017年時点でインターネット依存の疑いのある中高生は推計93万人。2012年度の調査の52万人から5年間で約1.8倍に急増した(詳細は「『ネット依存疑い』中高生93万人 厚労省研究班」の記事参照)。

「厳密にいえばインターネット依存にはSNS(交流サイト)依存なども含まれますが、現実に私たちの専門外来を受診する患者さんのほとんどはゲーム依存、それもオンラインゲームを介するものです」(樋口さん)

久里浜医療センターを受診する患者の平均年齢は19歳。中高生が中心で、男女比は約8:2の割合で男性が多い。これまで中高生ら「子どもの問題」であったゲーム依存だが、近年は大人でも同様に増加傾向が見られるという。急増の背景には、スマートフォンの普及やゲーム市場の拡大など様々な要因が考えられる。

オンラインゲームはなぜ"ハマりやすい"?

特にオフライン(インターネットに接続していない状態)からインターネット上のオンラインゲームが主流に変わったことと、スマートフォンの登場によって、患者数が増えるだけでなく、依存の質もガラリと変わったと、樋口さんは言う。

オフラインゲームは「クリア」というゴールがあり、徹夜で熱中しても2~3日でクリアしてしまえば日常に戻ることができた。それがオンラインゲームになると、絶えずアップデート(更新)されるため終わりがないうえ、リアルタイムで世界中のユーザーと競い合えるなど、飽きさせない工夫も豊富だ。さらに、他のユーザーと顔の見えないコミュニケーションでつながることもでき、バーチャルな世界の中で、誰かから称賛される、役割を与えられる、協力して頑張るといったリアルな反応まで得られるようになっている。

新しいゲームも次々と登場し、関係するイベントなどプロモーションも際限なく、ユーザーはより面白いものへ駆り立てられやすい。さらに、持ち運びできるスマートフォンによって、いつでも、どこでも、他人の目が行き届かないところでプレーすることが可能になり、こうしたことのすべてがゲーム依存の増加に拍車をかけている。

ゲーム依存の脳はどうなっているの

ここで、なぜゲーム時間が長くなっていき、やめられなくなるのか、そのとき、脳内では何が起こっているのかを簡単に見ておこう。

人の脳の中には本能をつかさどる部分(大脳辺縁系)と理性をつかさどる部分(前頭前野)があって、絶えずこれらがシーソーゲームをしており、通常、理性が本能より優勢な状態であれば行動をコントロールできる。

この理性をつかさどる前頭前野は子どもの頃からゆっくりと発達するため、年齢が低いほど働きが弱く、自己コントロールが難しい。そのため、子どもは好奇心をかき立てるゲームの刺激をダイレクトに受けやすく、大人よりもたやすく依存に陥りやすい。また、注意欠如多動性障害(ADHD)など、もともと衝動性が高い脳の特性を持っている場合は、衝動のコントロールが利きにくく、より依存になりやすい。一方で、もともとは前頭前野(理性)がうまく働いている人でも、ゲーム依存が進行すると前頭前野の働きが低下してコントロールが利きにくくなり、悪循環に陥る場合もある。

また、ゲームの画像など刺激をきっかけに脳が過剰に反応する、あるいは、刺激にすぐ慣れてしまい、より強い刺激でなければ快楽・多幸感を得られなくなる(報酬欠乏症という)といった脳の変化が起こることも分かってきているという。こうした変化が作用して、より強い刺激を求めてゲームに時間とお金を投じていくのだ。

なお、樋口さんによれば「ネット依存者の脳の神経細胞はダメージを受けるという研究もあり、同じことはゲーム依存にも当てはまると推測できる」そうだ。ただし、ネット依存から回復すれば脳のダメージが回復するかどうかまでは研究報告はなく、まだ分かっていない。

リアルな経験が乏しくなることが問題

実際にゲーム依存が進行してしまうと、心身や生活に様々な影響を及ぼす。久里浜医療センターの外来に訪れる患者の典型的なパターンは、親の言うことを聞かずにゲームに没頭し続ける結果、朝起きられなくなり昼夜が逆転するなど、生活リズムを崩すというもの。やがて不登校、ひきこもりといった問題も重なることが多い(図)。食事もとらないために痩せて体力が低下し、低栄養や運動不足から様々な健康障害も引き起こす。「食べる・動く・寝る」という健康の基本が崩れれば、健全な成長も阻害されてしまう。

さらに、ゲームをしていないとイライラしたり、無気力になったり、抑うつ的になったりと、精神面にも影響を及ぼすという。

「あくまでも個人的な印象ですが、患者さんと接すると、現実の生活や対人関係を十分に経験していないせいか、同年齢の人に比べて幼い印象を受けます」(樋口さん)

人は山あり谷ありの現実生活や対人関係を通して、社会性や生きる力を身に付けていくものだが、ゲームの中のバーチャルな世界が充実すればするほど、リアルな経験が乏しくなってしまうことが問題だと樋口さんは指摘する。

「例えば、サッカーで上達してプロになるには相当の努力が必要ですが、ゲームは簡単にうまくなるようにできています。彼らは現実生活のストレスやトラブルを避けて、簡単に称賛が得られたり、居場所が見つかったりするゲームの世界へと逃げ込んでしまうのです」(樋口さん)

ゲームにのめり込むほどに感情をコントロールできなくなり、「性格が変わったみたいに突然キレたようになる」と表現されることもよくあるという。

「ゲームの中で人を殺したりしているわけですから、そうしたバーチャルな世界とリアルな世界の区別ができなくなっていくことは容易に想像できます。しかし、ゲームの種類にかかわらず、依存していると攻撃的になるというのは、概して世界的に同じ傾向のようです」(樋口さん)

このようなゲーム依存の影響が毎日の生活に広がると、親子の間にあつれきが生じる。思春期の男子の場合、多くは暴力など攻撃の矛先が母親に向かうので、受診する時点では疲弊しきっている母親も少なくないという。

「やり過ぎ」と「依存」の境目は?

こうした背景を知ると、「自分の子ども(または自分自身)も危ないかも?」と気になる人もいるだろうが、「やり過ぎ」と「依存」の境目は分かりにくい。樋口さんによれば、「ゲームの過剰使用がある」ことと「そのために何か明らかな問題が生じている」ことがセットで起こっていれば依存が疑われる。

例えば朝起きられない、睡眠時間が短くて昼間居眠りする、仕事のパフォーマンスが落ちている、勉強しないために成績が落ちる、など少しでも日常生活に問題が起きていないかを振り返ってみよう。また、周囲の人からやり過ぎを指摘されたときにカッとなったり、むきになって否定したりする場合も、依存が進行していることの表れかもしれないという。

「明らかに度を越えた状態にありながら、それを指摘されると急に怒り出したりするのは"否認の病"ともいわれる依存症に特徴的な反応です。外来を受診する子どもたちもゲームをやめることには抵抗しますし、家庭で親御さんと争って、暴力を振るったりするケースも珍しくありません」(樋口さん)

ゲーム依存になりやすいリスク要因は?

なお、樋口さんらが2016年、ゲーム依存に関する13の縦断研究(同一の対象者を一定期間追跡する疫学研究)をレビューしたところ、ゲーム依存のリスク要因も浮かび上がってきたという[注1]。次のような人は、そうでない人に比べゲーム依存になりやすい傾向があるかもしれない。

ゲーム依存になりやすいリスク要因】
●ゲームを始めた時期が早かった
●ゲーム時間が長い
●ゲームを原因とする問題がある
●父子家庭・母子家庭で育った
●(親もゲーム好きなど)ゲームを肯定する傾向が強い
●男性である
●友人がいない(少ない)
●衝動性が高い

依存が進行していることが疑われる状態なら、家族だけで抱え込まず、外部の力を借りるほうがいい。親や家族が言って聞かなくても、学校の先生や友人の言うことには従うというケースもあるという。医療機関に相談する場合、専門の病院や医師は少ないのが現状だが、まずは地域の精神保健福祉センターや以下のリストにある病院を参考に相談してみよう。

●依存症専門病院リスト(国立病院機構久里浜医療センターホームページより)
http://japan-addiction.jp/cl/2016_izon_senmon_hosp_list.html

ゲーム依存の進行は早く、長引くほど回復も難しくなってしまう。様子を見ても自然に良くなることはまずないので、できるだけ早い段階で適切な対応をしたい。できれば依存に陥る前に防ぎたいものだ。次回はゲーム依存からの回復、家族の対応や予防策について、お伝えする。

[注1]Mihara S,et al.Psychiatry Clin Neurosci. 2017;71(7):425-444.

(ライター 塚越小枝子、図版作成 増田真一)

樋口進さん
独立行政法人国立病院機構久里浜医療センター院長。1979年東北大学医学部卒業。慶應義塾大学医学部精神神経科学教室に入局、1982年国立療養所久里浜病院(現・国立病院機構久里浜医療センター)勤務。米国立衛生研究所(NIH)留学を経て1997年国立療養所久里浜病院臨床研究部長。2012年から現職。日本アルコール関連問題学会理事長、WHOアルコール関連問題研究・研修協力センター長、WHO専門家諮問委員(薬物依存・アルコール問題担当)。

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