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臨床心理士の東畑開人氏

臨床心理士の東畑開人氏

予防医学研究者の石川善樹氏が、自らの価値を世に問い続けている人々の思考法に迫る対談シリーズ。今回の相手は臨床心理士で、十文字学園女子大学の講師を務める東畑開人氏だ。京都大学の大学院で教育学と心理学を学び、博士号を取得。その後、沖縄に多いヒーリングなどの民間療法をフィールドワークするなど、「心の治療とは何か」を様々な角度から研究している。今の時代の「癒やし」について、瞑想(めいそう)の一種であるマインドフルネスなどにも詳しい石川氏と議論を戦わせた。

「モノは豊かだが心は貧しい」という前提に疑問

石川 東畑さんは2015年に「野の医者は笑う 心の治療とは何か?」(誠信書房)という本を書いています。僕はこの本を漫画「宇宙兄弟」などの編集者である佐渡島庸平さん(コルク代表)から薦められ、非常に面白く読みました。

東畑 沖縄にはヒーリングやパワーストーン、タロット占いなどを使う、ちょっとふしぎな治療者が多いのです。臨床心理学の立場からは、相いれない部分も多いのですが、詳しく話を聞いてみると、魅力的な人も多く、そして実にたくましく生きている。そうした「野の医者」の治療法を鏡として、臨床心理学と比較しながら心の治療の本質を探ってみたら面白いんじゃないかと考えたのです。

石川 本を読むと、実際にさまざまなふしぎな治療を受けていますよね。さらに、治療だけでなく、治療者の普段の生活にも密着して、かなり人生の深いところまで聞いています。

東畑 京大という自分が教育を受けたところから離れてみると、あらためて、これまで学んできた臨床心理学ってなんなのだろうという疑問が湧きました。日本は高度成長を続け、モノは豊かになったけれど、心は満たされているのかというのが、私が学んだ頃の心理学の大きな命題でした。

ところがバブル崩壊後、現代に至って、非正規雇用の問題をはじめ、人は豊かどころか、生きていくので精いっぱいという状況が続いた。経済格差の拡大で、一部の若者などはいまだにそうした生活を強いられています。そうした時代の臨床心理学とは何か。もう一度、違った角度から考えてみようと思ったのです。

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