日経エンタテインメント!

ちなみに、ネットフリックスが独自のビッグデータをひとつの指標として作品作りに活用していることは、広く知られるところだろう。その最大の成功例のひとつが『ハウス・オブ・カード 野望の階段』である。しかし、サランドスは自分たちが最も重視しているのは「適材適所の人選を行うこと」だと強調する。適切な人材を選び、プロジェクトが動き始めれば、あとは監督、脚本家に任せて口出しはしない。この作り手に自由を与える“クリエイティブフリーダム”はネットフリックスの作品作りの大きな特徴で、クリエイターに絶大な支持を得ており、同社に多くの優秀な人材を引きつける大きな要因となっている。ローカルで制作される作品についても同じことがいえる。

日本に関しては、人気映画のアニメ化となる『パシフィック・リム』、同社のオリジナルシリーズの近未来SFアクション『オルタード・カーボン』のアニメ化、橋本花鳥のコミックを原作とした『虫籠のカガステル』のアニメ化などが発表された。会場は大いに盛り上がり、アジアでの日本のアニメーションの人気の高さがうかがえた。実写作品については事前に山田孝之主演の『全裸監督』、園子温が手がける『愛なき森で叫べ』などが19年に配信されることが発表となっていたが、日本発のコンテンツとしてはやはりアニメーションに比重があることは間違いないだろう。この件に関して、サランドスは次のように語った。

創業者兼CEOのリード・ヘイスティングス氏

「もちろん日本のドラマについても興味を持っている。これから進めていきたいとも思っている。そのためには、まずきちんとした物語を発見することが必要だ。そして、その物語に対してどれだけの視聴者がいるかを見極めていかないといけない。最近では『宇宙を駆けるよだか』というドラマが、日本でも他の国でも大変評判が良かった。今後は視聴者の様子を見ながら、日本のドラマについても広げていきたいと思う」

どれだけユニークであり面白いか

もうひとつ、イベントと取材を通して強く感じたこと。それはパネル登壇者たちだけでなく、サランドスやヘイスティングスもまたまぎれもなくエンタテインメントの熱烈なファンであるということだ。

ヘイスティングスは、個人的に好みの作品を聞かれて、「『ハウス・オブ・カード 野望の階段』や『ザ・クラウン』、新作の『ボディガード -守るべきもの-』、そして芸術性の高い作品」とコメント。配信前の予想を超えて異例の大ヒットとなった『13の理由』のように、「予想外のヒットになったと認識している作品は?」との質問には、オリジナル映画『好きだった君へのラブレター』を挙げた。「特にこの夏、ラブロマンス系の作品の人気に手応えを感じた」と言う。また、最近自身が周りからの評判を聞いて見たところ、とても楽しかった作品は、本来の好みとは異なるロマンチックコメディー『キスから始まるものがたり』だったとか。この経験から「エンタテインメントは何がベストかではなく、どれだけユニークであり面白いかが重要」であることを改めて感じたという。

「最近はロシア発の作品からロシアについて学んでいる」とも語っていたヘイスティングス。「異文化を知る」こともまた海外ドラマを見る本来の大きな楽しみであること、ネットフリックスによって、その機会は格段に増えたことを再認識させられる取材だった。(敬称略)

(ライター 今祥枝)