2018/12/15

こうした謎の多くは、これまでに発見された新石器時代の仮面の大半が個人の所有物であり、確固たる考古学的な由来が不明であることに原因がある。IAAの発表によると、現在のところ、16個の仮面のうち考古学的な背景が明確にわかっているものは2つにとどまる。1つはイスラエル、ナハル・ヘマルの洞窟で見つかったもの、もう1つはイスラエルの軍人モーシェ・ダヤン氏が購入したものだ。

新石器時代の風習としては、他にも人間の頭蓋骨に石膏を塗るというものがある。1953年にナショナル ジオグラフィック誌に掲載されたこの写真は、考古学者のキャスリーン・ケニオン氏(右)が、エリコ付近にあるテル・エッ・スルタン遺跡で発掘された、石膏が塗られた新石器時代の頭蓋骨を調べているところ(PHOTOGRAPH BY DAVID BOYER, NATIONAL GEOGRAPHIC)

先日見つかった仮面の場合は、発見者である匿名の個人が、ルプ氏を発見場所に案内している。仮面が盗難防止部隊に自発的に提出されたものなのか、あるいは追跡の結果見つかったものなのかについては、複数の相反する情報があり判然としない。ルプ氏によると、遺跡の表面の調査からは、紀元前7500~6000年の火おこし用の石器が見つかったという。仮面の同位体および鉱物組成の予備的な分析により、この遺物が同地域周辺から発掘されたものであることがわかった。

大半の仮面の出どころがはっきりしないせいで、その真贋に疑問が持たれるのは理解できるとルプ氏は言う。彼女はしかし、新たな仮面の出どころは前述の遺跡であると確信している。

「今回の仮面の背景については間違いありません。(最終的な仮面の分析結果の)論文を発表すれば、この話には決着が付くでしょう」

証拠が足りない

考古学者の中には、発見場所が明らかになるだけでは不十分だと主張する者もいる。「どの遺跡から出土したかがわかったとしても、仮面がどのように使われたかが判明するわけではありません」と、米シカゴ大学の考古学教授、ヨーク・ローワン氏は言う。「仮面は墓と一緒に見つかったのでしょうか。そこは儀式が行われた、何らかの聖地なのでしょうか。こうした類の疑問への答えは、考古学的な情報がない限りわかりません」

米デポール大学の人類学教授で、仮面の真贋に関する論文を執筆中のモラグ・カーセル氏は、16個の仮面のうち、科学的に正しい手法で発掘されたものが1つだけであるという事実もまた、その他の仮面は偽物ではないかという疑念を抱かせる原因になっていると述べている。

本物説の支持派が根拠として挙げているのは、2014年に行われた、石仮面12個(個人が所有する由来不明の10個を含む)の表面のパティナ(薄膜)の分析だ。このときの分析結果は、仮面はすべてイスラエルの丘陵と砂漠のある狭い範囲で見つかったことを示していた。今回の仮面もまた、同じエリアから出土している。

それでも、偽物の遺物の表面に「本物の」パティナを偽造することも可能だと、カーセル氏は指摘する。「科学的に正しい手法で発掘されたものでない限り、その仮面が偽物かどうか、本当はどこに由来するものなのかといったことは、知りようがないのです」

シモンズ氏もまた、他の仮面の出どころがはっきりしないことから、今回の新たな発見について、手放しでは喜べなかったと述べている。「非常に興味深い発見であることは確かですが、もっと多くの証拠が欲しいところです。(今回の発見を聞いて)最初に思ったのは『ふーん、それは本物なの』でした」

(文 KRISTIN ROMEY、訳 北村京子、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2018年12月4日付]