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グローバル企業トップにインド人が多い5つの理由

インドでMBA(8)

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NIKKEI STYLE

今や世界中で錚々(そうそう)たるグローバル企業や組織のトップにインド人が君臨し、グローバルビジネスの中心として活躍をしているのはご存知の方も多いかと思います。

「なぜ世界で活躍できるインド人がこれほどまでに多いのか?」について興味を持った私は、現在通っているIndian School of Business(以下ISB、インド商科大学院)のMBAのクラスの場を借りてこのお題について一度ディスカッションをさせてもらったことがあります。今回はISB学生とのディスカッション内容を元に、世界で活躍できるインド人が多い理由についての考えを書かせて頂こうと思います。

(1)人口:世界の15%以上 天才が産まれる確率も単純に高い

まず真っ先に考えられる理由の一つが人口かと思います。インドの人口は13億人以上とも言われており、これは世界の総人口の15%以上に当たります。人口が13億人もいれば遺伝子的にも頭の良い並外れた天才が産まれる確率も単純に高いと考えられますし、人口が多ければその分インド国内での競争も激化し、その競争に晒され一人一人の能力が伸びることにより優秀な人材が育ちやすい環境がインドにはあるといったことも考えられます。また、自分の考えを主張しないとその他大勢に埋もれてしまう為、自分の意見をはっきり主張できる人が多いというのもインド人が世界で活躍できる理由の一つかもしれません。

(2)多様性:多様性を受け入れる器量と利得を最大化する交渉術

次に考えられるのが多様性です。インドは世界的に見ても最も多様性に富んだ国の一つだと思います。ひとくくりにインドといっても州によって人種も文化も宗教も大きく違いますし、言語に至ってはインドには公式な言語だけで20以上の言語が存在します。また、インドでの生活は、マーケットで買い物するにせよタクシーやリキシャで移動するにせよ、毎日が小さな交渉の繰り返しです。

インド人は人との意見の対立を恐れずに自分の主張ははっきりとする上、皆が皆それぞれに持った多様なバックグラウンドと違う考えのもとで好き勝手言いたいことを言うので、議論や交渉が始まるとなかなか収束しないといった光景をよく目にします。とは言え、お互いに相手の考えや主張を理解してある程度は譲歩し受け入れないと、いつまでも話が前に進まないという事実については彼ら自身も十分理解しているようです。

グローバルにビジネスをするに当たっても、多様性を理解してお互いに納得できる妥協点を見つけた上でそれを受け入れることができる器量と、一方では自分の主張を明確に伝え相手の説得を常に試みながら自らの利得を最大化するための交渉術が求められると思うのですが、インド人にはその2つが日々の生活を通して自然と備わっているのかもしれません。

(3)言語:英語をネイティブ並みに扱える

インド国内ではヒンディー語の話者が最も多いのですが、上述した通りインドには公式な言語だけで20以上の言語が存在する為、インド人同士でのコミュニケーションでも英語が共通言語として使われることが一般的です。もちろんインド人がみんな英語を喋(しゃべ)れるわけではありません。ただし、高等教育を受け大学を卒業しているようなインド人であれば、訛りはありますが英語をネイティブ並みに扱うことができます。第4回連載でも書きましたが、彼らは3歳頃から英語での会話をはじめ、子供のころから学校の授業も日常会話も全て英語により育ってきている為、英語は母語と大して変わらない感覚で使っているようです。

英語ができるので言語のハードルが低いのはもちろんのこと、環境的にもインドで育って生活していたらある程度は他のどの国に行ってもやっていけるので、彼らは海外でも不自由なく生活しながら働ける分、存分にそのパフォーマンスを発揮することでグローバルに活躍できる人材も多いのかと思います。また、インドから外に出たほうがインド国内にいるよりも人材の競争は少ないとも言われており、給与水準が高い外国に積極的に出ようと考えるインド人も多くいるようです。もとの人口が多いのでその人数も単純に多いでしょうし、今もなお増加傾向にあるため、世界中に散らばるインド人ネットワークも必然と勢力を増して拡大していくことで、増々インド人が世界で活躍しやすい環境が整ってきているのかもしれません。

(4),教育:理工系バックグラウンドを持った人材が豊富

インドからはエンジニアをはじめとした理工系の優秀な人材が数多く輩出されているのはご存知の方も多いかと思いますが、では、なぜこれほどインドには理工系出身の人材が多いのでしょうか。ISBの友人達に訪ねてみたところ、インドに理工系人材が多い理由は主に2つあって、その1つは親からの厳しいプレッシャーによるものだそうです。インドでは一般的にエンジニアか医者になれば将来安泰といったイメージが定着しており、インド人の親は子供にはとにかく数学や物理/化学に力を入れて勉強をさせるようです。裕福な家庭であればエリート人材になれるように子供の頃から英才教育を施して育てるようで、ISBの学生にはこのパターンが多くいます。

一方で、インドは貧富の差が激しく教育を満足に受けられない子供達も未だにたくさんいますが、裕福ではない家庭の場合でも家族の運命が将来の子供の職業にかかっているので、そのプレッシャーを背負いながらエンジニアや医者になるために必死に勉強をしている子供も多いようです。

2つ目の理由が、学校で学ぶ科目です。日本では一般的に小学校~高校までの義務教育の間に幅広い科目を均等に学ぶことになると思いますが、インドでは小学校から高校までの12年間(インドでは12gradeと呼びます)を特に数学や物理/化学に集中的に費やし、しかもそれを英語で学んでいます。日本のように体育や家庭科、音楽、美術、道徳などを学ぶ機会は限られており、歴史などは一応学ぶそうですが、実際には多くの時間を数学と物理/化学に費やすとのこと。

また大学進学についても多くのインド人がそのまま理学か工学の道に進み、その後海外の大学院やISBのようなビジネススクールのMBAに進む人達もいますが、既にその時点ではその多くが英語を扱える理工系バックグラウンドを持った人材として確立されています。この様に、ITが重要性を増している現在のグローバル社会において必要になりそうな人材を量産する土台がインドには整っているのかもしれません。

(5)習慣:"不確実性をマネジメントする力"を備えている

世界で活躍できるインド人が多い理由としては上述した(1)~(4)のような内容がいわゆる一般的な見解かと思います。もちろんこのような理由がインド人のグローバル社会での活躍に大きく影響しているのは間違いないとは思いますが、私は世界で活躍できるインド人が多い最大の要因は 不確実性をマネジメントし、不確実な状況下で意思決定を行い行動する力がインド人には備わっているからなのではないかと考えています。

前回第7回の連載でも書かせて頂きましたが、インドの混沌の中で生きていくという事自体が割とストレスが溜まるものです。インドでは生活をするにしてもビジネスをするにしても、何から何までどれもこれも一筋縄ではいかないものばかりで、モノゴトはうまく運ばないことのほうが多い上に、しかも誰も責任を取りません。2016年11月8日にはインド首相により突然全ての高額紙幣を廃止する宣言がなされ、翌日9日から実施されたこともありました。税制や法律が急に変わったりするのも日常茶飯事です。

そういうのが本当に日常的に頻繁に起こるので、インドで生きている限りはその不確実な要素を自分自身で全てマネジメントしなければいけません。何かあっても誰も動いてはくれないし、こうするべきといった正解もなく、情報も非常に限られています。そんな中で今ある問題を解決するためには自分の頭で考えて、決めて、動くしかありません。

インドには"ジュガード"という発想法が古くから伝えられており今もなおインド人に浸透しているのですが、これは頭を柔らかく創意工夫をすることで物事を解決する方法を見つけるという発想法です。いわゆる"イノベーション"と同義のように捉えることができなくはないのですが、実際はそれほど大層なものではなく、とりあえず不便な現状や不具合をなんとかするための応急処置的に使われることが多いのが実態ではあります。

ただ、インド人は普段の日常から小さな、でも大量の不確実性をこのジュガードの発想法も駆使しながらマネジメントして育ってきているので、不確実性をマネジメントする力が習慣化し頭と体に染み付いているのは間違いないかと思います。

インド人にとっては当たり前のことでも、この不確実性をマネジメントし、不確実な状況下で意思決定を行い行動する力って、実はグローバルにビジネスを行う上でも非常に強力なスキルなのではないでしょうか。現代は"VUCAの時代"といった表現が最近よく使われています。VUCAとは、Volatility-変動、Uncertainty-不確実、Complexity-複雑、Ambiguity-曖昧の頭文字4文字を取った略称です。現代のビジネスはインターネットの普及等により急激に進化と変化を遂げている分、不確実性も多く含んでいますし、特に企業に求められている"イノベーション"なんて、誰もやったことのない未知の領域への挑戦なので不確実性の塊といっても過言ではないかもしれません。

"VUCAの時代"において経営者には、予測不能な事態を受け入れて、その都度考え、適切に行動する力がより一層求められているのかと思いますが、インドにはその力を備えた人材が多く、更に上述(1)~(4)のような条件も複合的に重なることで、世界で活躍できる人材が昨今インドから豊富に輩出されてきているのではないか、というのが私なりの見解です。

また、日本企業がインド市場に参入して失敗する事例が多いのも、実はこの不確実性への耐性があまり無いからなのかもしれません。時間をかけて市場調査をしっかり行い、十分な検討をベースに事業計画を綿密に立て、いざインド市場に参入した途端、インドの市場価格がある日突然半分にまで落ちてしまい想定していた事業計画があっという間に白紙になってしまった、なんていう日本企業の事例もあります。

日本には世界に自慢できる日本の良いところが本当にたくさんありますが、恐らく世界でも有数の便利で住みやすい日本という国で特に不自由もなく生まれ育った人が多いであろう日本人と、混沌としたインドという国で生まれ育ったインド人のどちらがこの不確実性をマネジメントする力を有した人材をより多く輩出できるかは明白だと思います。

最近では日本企業もそのようなインド人材の価値に気づき、積極的にインド人を採用しようと試みているようです。私と同じ立命館アジア太平洋大学(以下、APU)の卒業生がCEOを務める会社があるのですが、この会社は"PIITs"というプログラムを通してインドの大学生を日本企業へ紹介しマッチングさせるような取り組みを行っています。対象としているのは世界最高峰の理工系大学とも呼ばれるインド工科大学の大学生で、夏休みの2ヵ月間を利用して彼らに日本企業でのインターンシップの機会を提供し、企業側はインターンシップ中の学生のパフォーマンスを見て採用するか否かを決めることができるようです。

一方で不確実性をマネジメントできる日本人を育てるという意味では、これまた私の母校であるAPUがおもしろい取り組みをしています。その取り組みは短期海外実習プログラムなのですが、なんと行き先はくじ引き、泊まるところは自分で現地調達、そして言語が通じない地域でアンケート調査をするといった内容のサバイバルプログラムです。自主的に行動する力や、間違えても怯まない精神力を鍛えることを目的としたプログラムのようで、学生全員に海外経験を積ませることを目指しているAPUでは日本人学生の5人に1人がこのプログラムの経験者だそうです。このようなプログラムの充実により不確実性をマネジメントできる人材が日本にももっと増えてくれば、インド人のように海外の大企業でCEOを務め活躍するような日本人が続々と現れる日もそう遠くはないかもしれません。

以上、今回はなぜ世界で活躍できるインド人がこれほどまでに多いのかについての私なりの考えについて書かせて頂きました。

和泉沢剛(いずみさわ ごう) 東京都出身。立命館アジア太平洋大学卒業後、日本の大手総合電機メーカーに就職し、海外事業拠点設立/海外M&A/新規事業立上げ/戦略的事業ブランディング等のプロジェクトに幅広く従事。現在は戦略部門の責任者としてインドに駐在する傍ら、週末はインドのビジネススクールに通いMBA取得を目指す。趣味は海外旅行で、これまで世界30か国以上約100都市を訪問。

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