好きに理由なし 世代超え共感、大石静さんが描く恋心ドラマ『大恋愛~僕を忘れる君と』のプロデューサーに聞くヒットの理由

佐藤:女性陣が盛り上がってそれぞれの恋愛を語っている時は、男の僕はちょっと入り込む余地がないというか。

貴島:そんな時に「あなたも何か言いなさいよ」とか言われたりしません?

佐藤:「男としてどう思うのよ」と意見を求められたりしますね。

貴島:それは答えるのが難しい。北川悦吏子さんと仕事をした時に、「主人公同士、なぜ好きになったんですか?」としつこく聞いていたら、「女性は、なぜ好きになるんじゃなくて、いつ好きになるかです!」と大反論されたことがあります。「女性は今まで好きじゃなくても、ある時・あるシチュエーションで好きになったりするものなんです。男性の場合はだいたい好きになるタイプは同じなので、なぜ好きになったのか理由があるのかもしれないが、そこが女性とは違う」と言われ、それ以降、しつこく聞かないようにしました。

自分を忘れていく彼女を献身的に支える恋愛模様が、幅広い世代から支持を得ている

宮崎:大石さんも「何で好きになったのかって、そんなに重要?」とおっしゃっていましたね。今回のドラマの中で、戸田恵梨香さんが演じる北澤尚が、ムロツヨシさんが演じる間宮真司を好きになる理由をわざと描かずに、いつの間にか好きになって、キスまでいくという感じにしたんですけど、大石さんも「これをされたから好きってことではないよね」っておっしゃっていて。でも尚は婚約者がいる身なので、ただの尻軽女に見えないよう、すごく気を遣いました。

佐藤:「好きと嫌いは自分じゃ選べない」っていうセリフがあったんですが、好きになったら好きっていう直球が僕は非常に印象的でした。最初に読んだ時、男としてはちょっと理解ができなかったんですけど。戸田さんとムロさんのお芝居を見て「気持ちで動くとはこういうことなんだ」と納得しました。

貴島:対照的に、尚の元婚約者で主治医の井原侑市役を演じる松岡昌宏さんですが、気持ちではなく理論的に行動する理系男性として描かれているのがちょっとかわいそうかなと。相手の病気が分かったから婚約解消って、いくらなんでもそんなドライに割り切れるものなのかなって。

宮崎:「理性で考えて婚約した相手だから、その人に病気が見つかった時に、結婚する前に分かって良かったと思うんじゃないか」と大石さんはおっしゃっていましたね。監督も「籍を入れる前に病気が分かって婚約解消するのが普通でしょ」と言っていて、私は「えー!?」ってなりました。もしも私がその立場だったら「それでも好き」「婚約解消はしたくない」って言ってほしいですもん。佐藤さん、どうですか?

佐藤:僕も身を引くと思います。何年も恋愛してきて「この人のすべてを背負ってもいい」と思えるくらいの人なら違うかもしれないけれど。

宮崎:大石さんいわく、「医師という社会的エリートのヒロインが病気になって、どんどん希望を失っておちていく姿が萌(も)える。私はエリートがおちていく様が見たいの」っておっしゃっていて。なるほど、大石さんが脚本を書いた『セカンドバージン』(2010年/NHK総合)にもキャリア官僚が登場するなど、確かにエリートが出てくる作品が多いんですよね。『大恋愛』でも、大石さんが描きたいものをどう表現されるのか、注目してほしいですね。

貴島:視聴者の皆様に共感していただけた要因は何だと思いますか?

宮崎:純粋に、大石静さんの素晴らしい脚本と、キャストの皆さんのお芝居の相乗効果だと思います。

佐藤:一週間の終わりに泣けて、ちょっとクスッと笑えるなど、いろんな感情が1時間の中で押し寄せてくるものってなかなかないと思うので、そういうところが視聴者の皆さんの心を動かしたのかなと思いますね。

貴島:ドラマを作っている先輩として思うのは、若いプロデューサーとベテランの大石さんがタッグを組んで、十分に議論し合って作っているというのがオリジナルドラマとして、恋愛ドラマとして成功のカギなのかなと思います。

[PlusParavi(プラスパラビ) 2018年12月7日付記事を再構成]

(C)TBS (C)Paravi

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