総務省が携帯電話会社に通信料金と端末代金を完全に分離することを強く求めている。俗に「分離プラン」と呼ばれるこの仕組みに変わることで、携帯電話料金が安くなるという。なぜだろうか。そのメリットとデメリットを検証してみよう。
総務省が強く求めている分離プランの導入
2018年8月、菅義偉官房長官の「携帯電話料金は4割値下げの余地がある」という発言が大きな話題となった。それをきっかけに携帯電話料金値引きに向けた行政の動きが、活発に進められている。
10月からは新しい有識者会議「モバイル市場の競争環境に関する研究会」が立ち上がり、携帯電話の料金引き下げに向けた課題を解決するための議論を押し進めている。11月26日に実施された同会議では、分離プランの導入を携帯電話会社に求めることなどを盛り込んだ「モバイルサービス等の適正化に向けた緊急提言」を公表した。「緊急」という言葉からも、総務省がいかに分離プランの導入を強く、しかも迅速に求めているかが理解できるだろう。

そうした行政の動きに呼応して、携帯電話会社は相次いで分離プランの導入に踏み切っている。既に分離プランを導入済みのKDDI(au)に続いて、ソフトバンクも2018年9月より、新料金プランの「ウルトラギガモンスター+」「ミニモンスター」で分離プランを導入。まだ分離プランが導入されていないワイモバイルブランドに関しても、2019年度に分離プランを導入するとしている。
分離プランを導入していなかったNTTドコモも2018年10月、分離プランを軸とした新しい料金プランを2019年第1四半期に導入することを発表している。新料金プランではユーザーの利用状況に応じて、通信料金が現在より2~4割程度値下げされるとのことだ。

だがそもそも、なぜ通信料金と端末代金を分離すると、通信料金が安くなるのだろうか。
複雑だった通信料金がシンプルに
携帯電話会社はこれまで端末と通信サービスをセットで販売してきた。契約者を増やし新しいサービスを利用しやすくするため、スマートフォン(スマホ)などの端末代金を大幅に値引いて購入しやすくする代わりに、毎月の通信料金は割高にするという料金の仕組みだった。
この仕組みは、端末を積極的に買い替える人にとってはメリットがあるが、同じ端末を長く使い続ける人は、他人の端末代の値引き分も通信料金として負担しているため損になるという不公平感があった。また料金の中に、2年間の期間拘束を前提とした値引きや、端末の割賦払いなどが絡み合っているため料金の仕組みそのものが複雑で、解約が難しく他社に乗り換えにくいなどの不便さを抱えていた。
通信料金と端末代金が完全に分離すると、端末代金を安くしてその分を通信料金に上乗せすることができなくなる。上乗せ分がなくなるので通信料金は実質的に引き下げられる。通信料金に不公平感や複雑さがなくなるだけでなく、他社への乗り換えが簡単になることで携帯電話会社間の料金競争を加速させたい考えもあるようだ。
では実際のところ、分離プランの導入でどの程度料金は安くなるのだろうか。