「当時そのまま」を心がけつつ、最大限の快適さを追求した作りになっているところは好感が持てる。何せこの製品で再現されているのは20年以上前の「最新ゲーム」だ。若い人なら、古文書をひもとく考古学者のような気分で遊べるだろう。
筆者のように、当時を思い返しながらノスタルジーに浸って遊ぶ世代にしてみれば、内蔵されているタイトルの顔ぶれについて「あれがない」「これが欲しかった」などの意見はあるだろう。が、その「侃々諤々(かんかんがくがく)」も含めて楽しむのがプレイステーション クラシックへの向き合い方である気がする。
復刻ゲーム機はブーム?
冒頭にも記載したように、近年はかつての人気ゲーム機を小型化した復刻商品が続々登場している。任天堂は16年11月に「ニンテンドークラシックミニ ファミリーコンピュータ」、17年10月に「ニンテンドークラシックミニ スーパーファミコン」を発売。品切れでなかなか買えない事態を招き、ニュースとなった。このシリーズは、18年7月に「ニンテンドークラシックミニ ファミリーコンピュータ 週刊少年ジャンプ創刊50周年記念バージョン」も発売されている。こちらは、集英社の週刊少年ジャンプが創刊50周年を迎えるにあたり、同誌にゆかりのある作品ばかりを集めた特別版だ。


SNKは、アーケードゲームファンに人気の高い同社の家庭用ゲーム機「NEOGEO(ネオジオ)」を復刻した「NEOGEO mini」を18年7月に発売。この12月にクリスマス限定版も発売するという。19年にはセガゲームスも「メガドライブ ミニ」(仮称)を発売する予定だ。また、方向性はやや異なるが、タイトーはゲームセンターにあった懐かしのアーケードゲームを復刻する「ARCADE1UP」シリーズを展開している。

この動きは国内に限らない。海外に目を向ければ、IBM-PC/AT互換機のMS-DOS時代のゲームを動かすコンソールや、米国コモドールから出ていた8ビットパソコン「コモドール64」のゲームを遊べるコンソールを復刻させる動きもある。

気づけば過去のゲームをハードウエア込みで復刻するのはブームと言ってもいい状況で、プレイステーション クラシックもこの流れに乗った製品の一つなのだ。この流れは今後も続くのだろうか。
今どきのスマートフォンに比べれば、20世紀に私たちを楽しませてくれたハードウエアの性能なんてたかが知れている。こう考えると、復刻は容易に思える。だが、テレビやディスプレーなど周辺機器ががらりと変わった環境で、ゲームファンが納得するほど再現性の高いものを作るのは意外と手間がかかる。メガドライブ ミニがより高い再現性を求めて発売を18年から19年に延期したのは、その難しさの表れとも言えるだろう。
数量限定で作るにしても、開発費を回収できるだけの売り上げを期待するなら、あまりマイナーな機種は難しい。当時のシェアや販売台数で言えば、「PCエンジン」が「もしかしたら?」といったところだろうか。オールドゲームファンとして、希望・妄想を膨らませているのだが、これをお読みのあなただったらどんなゲーム機の復刻を望むだろうか。
高校在学中からパソコン雑誌にてゲームレビューやイベントレポートを中心に、ライターとしての活動を開始。趣味であったゲームを仕事にしてしまったことを後悔しはじめた頃に、中学まで熱中していた釣りを再開。近年はアウトドア関連のほか、財布やバッグといった小物の記事など、節操なく手がける。
[日経トレンディネット 2018年11月27日付の記事を再構成]