楽しく「こたつで鍋」、鹿児島の味堪能 東京・代々木
冷え込みの厳しい冬、体を温めてくれるこたつ。この時期、家飲みパーティーで「こたつで鍋」を楽しみにしている人もいるだろう。体も胃袋も温まる冬ならではの「こたつで鍋」を店で楽しめるのが東京・代々木の「本家かのや」だ。
JR代々木駅東口から徒歩1分にある「本家かのや」は改札からすぐのビルの3階に店を構える。鹿児島県鹿屋市の食材を使ったメニューを中心とした鹿児島料理を味わえる店だ。鹿児島県大隅半島にある鹿屋市は、温暖な気候と豊かな自然にはぐくまれた食材の宝庫。「本家かのや」でも、キビナゴ、カンパチ、サツマイモ、黒豚、薩摩地鶏、つけあげ(さつま揚げ)など海・山・畑の恵みがそろう。
「本家かのや」の冬の名物といえば、こたつ席だ。店に入ると小上がりにこたつが並び、壁にはちゃんちゃんこが掛けられている。思わず「茶の間ですか?」と突っ込みたくなる不思議な空間だ。
さらにテラスにもこたつがある。シーズンテラスと呼ばれるテラス席は春には花見気分、夏にはビアガーデンとして季節を楽しめる席となっている。これが冬はこたつ席が並ぶ「こたつガーデン」(10月~翌4月まで)となるのだ。テラス席のこたつは掘りごたつで、椅子に座るような楽な姿勢でくつろげる。
もちろんシートで囲われ、外気の寒さからは守られているので冬季でもご安心あれ。こたつの上にはお通しとして、定番のみかんもセットされている。「ちゃんちゃんこを着て、みかんを食べながら、こたつでぬくぬく」が店で楽しめるとは。利用者からは「家飲みしているみたい」「ほっこりする」と好評だという。
ここではどんな料理が食べられるのだろうか。2大人気メニューが「定番 六白黒豚のしゃぶしゃぶ鍋」(1人前1580円、税別)と「濃厚 丸鶏の白湯鍋」(2~3人前3300円、4~5人前6000円、税別)だ。それぞれ味を紹介しよう。
「定番 六白黒豚のしゃぶしゃぶ鍋」は白豚とくらべて肉質のキメが細かく軟らかく、ほんのりとした甘さが特徴の鹿児島特産六白黒豚を味わう鍋だ。あっさり昆布ダシと野菜のうま味が溶けだしたダシで、肩ロースとバラ肉を「つけしゃぶしゃぶ」にし、しょうゆとダシベースのつけダレでいただく。薬味にはショウガとユズコショウをお好みで使おう。シメはあっさり雑炊かうどんが合う。
「濃厚 丸鶏の白湯鍋」は限定10食で、早い者勝ちのメニューだ。鶏ガラと香味野菜をコトコト煮込んだ濃厚な白湯スープに、軟らかく仕上げた丸鶏を入れた鍋で、4~5人前の場合は1羽まるごと入るので見た目も豪快な一品になる。手羽先、手羽中、手羽元、胸肉、ささみ、もも肉など鶏肉の部位による味わいや食感の違いも楽しめる。ショウガがたっぷり入っているので体もポカポカあたたまる、冬におすすめの鍋だ。野菜のうま味が加わった絶品スープで味わうシメにはぜひラーメンを。この2品を中心に、冬になると来店者の約9割が鍋料理を注文するというから、やっぱり「こたつで鍋」は王道なのだろう。
店長の池亀裕也さんによると、こたつ席利用客の多くは20代だという。7割は女性だ。ついで30~40代の女性が続く。「やはりこたつ席を体験したいという方が多いようです。普通の店に行くよりも『こたつで鍋』なら交流サイト(SNS)映えしますよね。それに、今の若い方はこたつを体験したことがない方も多いようです。実家にこたつがないとか、一人暮らしで家にこたつが置けないといった事情で『一度こたつ入ってみたかった』という声も聞きます」(池亀さん)
ほかにも味わってみたい鹿児島料理が色々ある。鹿児島で愛される錦江湾の魚といえばきびなご。「きびなご お刺身」(880円、税別)は鹿児島流にしょうゆではなく酢味噌でいただこう。
名産のサツマイモはカリッと揚げて、はちみつバターをからめた「からいもスティック蜂蜜バター」(750円、税別)で。「カツオの腹皮焼」(650円、税別)はカツオの産地として有名な枕崎で定番の食べ方で、カツオのトロの部分を焼いていただく。焼酎によく合うのでぜひ一緒に味わってみてほしい。
坪水醸造(鹿児島県鹿屋市)の麦味噌を使い店で手作りする豚味噌も自慢の味だ。「野菜スティック豚みそ添え」(480円、税別)についてくるほか、「黒豚ねぎ豚味噌」(850円、税別)では熱々の黒豚バラ肉とねぎとともに味わうこともできる。
「元祖とんこつ」(580円、税別)は豚の軟骨を麦味噌と焼酎で8時間煮込んだもの。鹿児島の定番料理であり、トロトロの食感で、やみつきになる味だ。「つけあげ」は薩摩弁でさつま揚げのこと。昔ながらの手作業で、錦江湾の小魚を1匹ずつ丁寧にすり身にして揚げたもので、焼酎との相性は抜群だ。
それにしてもなぜ鹿屋に特化した店にしたのだろうか。「店のオープン前に、特定のエリアの食材を使うコンセプト居酒屋を出そうと考えていた代表が各地を視察して、鹿屋で食材の豊富さや生産者の方の姿勢にほれ込んだことがきっかけです。鹿屋には海のものも山のものもありますから」と店長の池亀さんは語る。
「こたつを始めたのは、店のスタッフの企画が発端でした。6年前に始めて、そのころはほかに居酒屋でこたつ席をやっているところはなかったと思います」(池亀さん)。それから6年がたち、こたつ席をとりいれる居酒屋も増えてきた。東京では系列店の「両国テラス」(墨田区)でもこたつ席をとりいれており、ピザなどの洋食をこたつで楽しむことができる。
うまいものにはうまい酒だ。鹿児島の酒といえば、やはり特産のサツマイモを使った芋焼酎が代表格だ。冬に飲むなら、やはりお湯割りがいい。そこで池亀さんにお勧めのお湯割りの作り方を教えてもらった。
「お湯割りの基本は、まずお湯から入れて、その後に焼酎を注ぐこと。こうすることで対流効果で焼酎と湯がよくまざります。割る比率はお好みですが、お勧めは7:3のお湯割りです。お湯7の焼酎3にすることでゆっくり飲むことができ、体も温まります」
芋焼酎には「リナロール」という香り成分が含まれ、お湯割りにすることでより香りがたち、リラックス効果も高まるという。もちろん焼酎のお湯割りと鹿児島料理の相性は抜群だ。「本家かのや」では焼酎の水割りやお湯割りに使う水に、鹿児島から仕入れた温泉水を使う。こだわりの水で作るおいしいお湯割りを、ぜひ郷土料理と一緒に試してみてほしい。
「本家かのや」は駅からのアクセスも良く、迷うこともないだろう。テラス席のこたつガーデンは40人まで対応可能なので、大人数の忘年会にもぴったりだ。しかも「こたつ×鍋×ちゃんちゃんこ」と冬の宴会3点セットがそろえば、一気にうちとけた雰囲気になれるに違いない。今年の忘年会は店の「こたつで鍋」で親交を深めてみてはいかがだろう。
(日本の旅ライター 吉野りり花)
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。