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カリスマの直言

「米中休戦」 見過ごされている株高要因(武者陵司) 武者リサーチ代表

2018/12/10

米中首脳会談の結果について両国の発表には大きな食い違いがあった(写真は習近平中国国家主席とトランプ米大統領)=AP
「米中の覇権争いには根本的な妥協点がないが、首脳会談で目先の経済安定を優先した事実は大きい」

世界中が注目したアルゼンチン・ブエノスアイレスでの米中首脳会談は共同声明の発表がなく、米中双方の発表から全体像を推測するしかない会談であった。

メディアの報道によると、米国が年明けに予定していた中国への追加関税を猶予することで合意した。これにより、米中は知的財産保護など中国の構造改革を巡り協議を続けるが、米側は90日以内と期限を区切り、合意できなければ関税を引き上げる方針という。

■大勢の評価は「一時休戦、問題先送り」

ただし、議題や交渉期限などを巡り両国の発表内容には大きな食い違いがあった。米側の声明では発動猶予は中国の構造改革を条件としており、(1)米企業に対する技術移転の強要(2)知的財産権の保護(3)非関税障壁(4)サイバー攻撃(5)サービスと農業の市場開放――の5分野で協議し、90日以内に結論を得るとした。

それまでに合意できなければ、2000億ドル分の関税は当初計画通り25%に引き上げる。他方、中国側の声明は関税引き上げ猶予に加え、米国が現在25%の関税を課す500億ドル分の制裁措置も「取り消す方向で協議する」(王受文商務次官)とした。中国側の発表は協議期限を示さず、サイバー攻撃や技術移転の強要など具体的な交渉項目に触れるのも避けた。

メディアの大勢の評価は「一時休戦、問題先送り」であり、懸念の種は全く消えていないというものである。そうだろうか。今回の会談で最も重要な点は(1)米中覇権争いの本質は変わりようがない(2)米中双方が当面の経済と市場への影響を最大限の努力で回避した――の2点である。

■米中は覇権を争いながらも経済安定を優先

そもそも、米中覇権争いに根本的な妥協点はない。あるのはいかに相手を押さえ込むかということだが、その際の最重要戦術として目先の経済安定を優先した事実は大きい。おそらく米中貿易戦争が米国のリセッション(景気後退)の引き金を引くことは起きないのではないか。

90日後に中国の妥協が得られず追加制裁が発動されたとしても、米国は発動の米経済への影響を細心の注意でチェックした後であろう。見過ごされているようだが、株式市場における不確実性は大きく解消されたのである。

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