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少女を男として育てる 女性の権利、進まぬアフガン

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NIKKEI STYLE

ナショナルジオグラフィック日本版

極端な男尊女卑が残るアフガニスタンに、男の子と同じ自由を享受する女の子たちがいる。生まれた娘を息子として育てる「バチャ・ポシュ」と呼ばれる風習だ。今も男の子として育てられる少女たちの姿をスウェーデン人の写真家ルールー・ダキ氏が追った。ダキ氏の写真とともに紹介しよう。

◇  ◇  ◇

家父長制社会のアフガニスタンでは、女性は経済的に男性に依存しなければならない。男の子が生まれない家庭は、結果的に社会的不名誉を背負わされ、親は難しい立場に立たされる。娘が生まれても一般に家のお荷物とみなされる。一方で、息子は金を稼ぎ、一族の遺産を継承し、家に留まって老いて行く両親の面倒を見てくれる存在とされているのだ。

男性優位の社会を生き抜くために男のふりをして生きる女性は、世界中に昔から存在した。彼女たちは男の服を着て戦争に行き、修道院に入り、専門的な職を得て豊かな生活を手に入れてきた。そしてアフガニスタンにも、子どもにより良い人生を与えるため、娘を息子として育てる人々がいる。

「片方の性だけが優遇されすぎて、もう片方が蔑視されると、性の違いを乗り越えて向こう側へ行こうと考える人が必ず出てきます」。米国を拠点とする女性団体「ウィメン・フォー・アフガン・ウィメン」のナジア・ナシム氏は言う。

「この風習によって、息子が生まれない家族であっても社会的不名誉を負うことを表面上は避けられるのです。バチャ・ポシュであればひとりで買い物にも出かけられるし、姉や妹を学校から連れて帰ることもできます。仕事やスポーツ、そのほか男子ができることは何でもできるのです」と、ナシム氏。娘をバチャ・ポシュにすると、次に男の子が生まれるという迷信すらあるが、バチャ・ポシュの風習がどうやって始まったのかはまだわかっていない。

セタールとアリ

バチャ・ポシュの存在を西欧世界に伝えたのは、ジャーナリストのジェニー・ノールベルグ氏だ。彼女の著書『The Underground Girls of Kabul(カブールの隠された少女たち)』を読んだダキ氏は、2つの顔を持つ少女たちに興味を抱き、2017年夏、アフガニスタンへ行ってバチャ・ポシュを取材した。

現地の通訳を介して、ダキ氏は、6人の娘のうち2人を息子として育てている一家に出会った。3人目の娘セタレが生まれると、両親はこの子を息子として育てることに決め、セタールと名をつけた。その2年後に生まれた娘アリも、息子として育てた。次にようやく一家のひとり息子が生まれたが、セタールとアリもそのまま男の子としての人生を続けた。

セタールは現在16歳。フットボールをやり、女の子の恋人もいる。恋人は、セタールが男であろうと女であろうと気にしないと話す。妹のアリは14歳で、女の子からもらったラブレターを箱に入れて保存している。家では、母親や姉、妹が食事やお茶の準備をしていても、セタールとアリは手伝おうとしない。

「男の子のほうが社会的な地位が高いとされるため、誰もが男の子を欲しがります」と、ダキ氏は言う。特に、低所得の家庭ではその傾向が強い。「娘ばかりで息子が生まれない家庭では、当たり前のように行われていることです」

だが、小さな子どもが成長して思春期に入ると、性の違いが顕著になり、少年として生きるのが困難になる。時には、危険な目にもあう。嫌がらせを避けるために引っ越しを繰り返す家庭もある。通りを歩けば、「反イスラム」「性転換者」などと心ない言葉を投げつけられる。アリの父親は、アリが安全に学校へ行けるように車で送り迎えをしている。セタールは、何度も嫌な思いをして学校へ行くのをやめてしまったという。

侮辱されても、女性として生きることは拒否

両親は、今さらながらアリやセタールに女の子の服を着せて、女の子らしくふるまうよう願っているが、今や本人たちはそれを望まない。ダキ氏は言う。「アフガニスタンで女性として生きるのは、本当に大変です。できることも多くありません。バチャ・ポシュとして生きることも、自分で決めたわけではなく、周囲の人が決めたことです。でもそれで少しは自由があったのに、今度はいきなり女性に戻れというのです。女性には可能性が制限されている、この国でですよ」

ダキ氏は、他にも男の子として生きる少女たちに会った。ザラは両親を亡くし、「自分の足で生きて行けるように」と願ったおじに、バチャ・ポシュとして育てられた。今は立派に成長し、これまでに8人の男性から求婚されたという。「周囲からは、とても強い女性だと見られています」と、ダキ氏は語る。他にも、家族を守るために2人の娘を男の子として育てるシングルマザーもいた。

ウィメン・フォー・アフガン・ウィメンは、首都カブールで女性のためのシェルターを運営しているが、少なくとも年に2回はバチャ・ポシュの女性がやってくるという。ケースワーカーにとって、こうした女性たちは特に難しいと、ナシム氏は言う。嫌がらせを受け、侮辱され、社会から切り離されても、本人たちは女として生きることを拒否する。年齢が上がれば上がるほど、性による文化的制限を受け入れることができなくなるのだ。彼女たちはベールをつけ、家族のために料理をし、他人の前では視線を下に向けることを学ばなければならない。

「体が成熟すれば、男でいつづけることは不可能であると気付くのですが、だからといって彼女たちを女性として受け入れてくれる人もいません。これは、女の子の能力とか才能とか権利といったものを無視した抑圧です。女の子の権利を否定するということは、女性という性に対する侮辱なのです」

次ページでも、さらにダキ氏がとらえたセタールとアリの姿をお届けする。

(文 Nina Strochlic、写真 Loulou D'Aki、訳 ルーバー荒井ハンナ、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック 2018年3月10日付記事を再構成]

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