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少女を男として育てる 女性の権利、進まぬアフガン

日経ナショナル ジオグラフィック社

2018/12/12

ナショナルジオグラフィック日本版

校門の外で、中傷したり服装をからかってくる子どもたちに言い返すセタールとアリの姉妹。「どうして男の子みたいな恰好をしているのかと聞かれることはしょっちゅうです」と、セタールは言う(PHOTOGRAPH BY LOULOU D'AKI, NATIONAL GEOGRAPHIC)

極端な男尊女卑が残るアフガニスタンに、男の子と同じ自由を享受する女の子たちがいる。生まれた娘を息子として育てる「バチャ・ポシュ」と呼ばれる風習だ。今も男の子として育てられる少女たちの姿をスウェーデン人の写真家ルールー・ダキ氏が追った。ダキ氏の写真とともに紹介しよう。

◇  ◇  ◇

家父長制社会のアフガニスタンでは、女性は経済的に男性に依存しなければならない。男の子が生まれない家庭は、結果的に社会的不名誉を背負わされ、親は難しい立場に立たされる。娘が生まれても一般に家のお荷物とみなされる。一方で、息子は金を稼ぎ、一族の遺産を継承し、家に留まって老いて行く両親の面倒を見てくれる存在とされているのだ。

男性優位の社会を生き抜くために男のふりをして生きる女性は、世界中に昔から存在した。彼女たちは男の服を着て戦争に行き、修道院に入り、専門的な職を得て豊かな生活を手に入れてきた。そしてアフガニスタンにも、子どもにより良い人生を与えるため、娘を息子として育てる人々がいる。

「片方の性だけが優遇されすぎて、もう片方が蔑視されると、性の違いを乗り越えて向こう側へ行こうと考える人が必ず出てきます」。米国を拠点とする女性団体「ウィメン・フォー・アフガン・ウィメン」のナジア・ナシム氏は言う。

「この風習によって、息子が生まれない家族であっても社会的不名誉を負うことを表面上は避けられるのです。バチャ・ポシュであればひとりで買い物にも出かけられるし、姉や妹を学校から連れて帰ることもできます。仕事やスポーツ、そのほか男子ができることは何でもできるのです」と、ナシム氏。娘をバチャ・ポシュにすると、次に男の子が生まれるという迷信すらあるが、バチャ・ポシュの風習がどうやって始まったのかはまだわかっていない。

■セタールとアリ

バチャ・ポシュの存在を西欧世界に伝えたのは、ジャーナリストのジェニー・ノールベルグ氏だ。彼女の著書『The Underground Girls of Kabul(カブールの隠された少女たち)』を読んだダキ氏は、2つの顔を持つ少女たちに興味を抱き、2017年夏、アフガニスタンへ行ってバチャ・ポシュを取材した。

アフガニスタンの「バチャ・ポシュ」という風習により、男の子として育てられた14歳のアリ。後ろに立っている姉妹たちとこの部屋を共有している(PHOTOGRAPH BY LOULOU D'AKI, NATIONAL GEOGRAPHIC)

現地の通訳を介して、ダキ氏は、6人の娘のうち2人を息子として育てている一家に出会った。3人目の娘セタレが生まれると、両親はこの子を息子として育てることに決め、セタールと名をつけた。その2年後に生まれた娘アリも、息子として育てた。次にようやく一家のひとり息子が生まれたが、セタールとアリもそのまま男の子としての人生を続けた。

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