預貯金偏重はガラパゴス つみたてNISAで脱却を積立王子のヤング投資入門(20)

しかし、産業界中心の経済成長は日本ではこの先、多くを望むことはできないでしょう。それよりも、豊かな生活をより渇望している人たちが大勢いる世界経済全体の成長軌道のなかに私たち生活者のお金が直接働きに出るほうが、はるかに合理的でより高いリターンが期待できます。それをかなえるのが投資によって世界経済にお金を働きに出すことなのです。

つみたてNISAで世界に資金を循環させる

世界経済の成長はこれまでも、そしてこれからも安定した軌道を描き続けるだろうということは、このコラムで伝えている通りです。そうしたお金の新たな循環をつくりだすために金融庁が新設した制度が少額投資非課税制度「つみたてNISA」なのです。

つみたてNISAでは投資信託しか買えません。それは生活者の預貯金を投資信託という仕組みを通じて分散されたポートフォリオで産業界に働きに出すことが最適だと、金融庁が判断したからです。しかも、生活者の長期資産形成に資するのに必要な条件を備えた商品しか買えないよう、金融庁は投資信託に厳格な届け出要件を課しました。

そして最長20年の非課税期間を設けて長期投資へと誘い、積立投資でしか参加できない仕組みを加えることで、毎月少額から始められ、生活者が世代を問わず誰でも投資家になれる制度として設計されているのです。

政府から税金で中抜きされないリターン

一切新たな富を生まなくなってしまった1000兆円もの預貯金。新たな富を生むお金にシフトさせるための重要な起爆装置として、つみたてNISAが制度化されたことにヤング投資家のみなさんも気付いたはずです。この制度設計を先導した金融庁の森信親前長官は、つみたてNISAを通じて1000兆円の預貯金から300兆円を経済活動を支える長期投資マネーに誘導したいともくろんでいました。

本当に私たちの預貯金のうち300兆円が世界経済の成長から恩恵を受けてしっかり育つお金に換わったなら、毎年10兆円規模の富が創出され、そのリターンは政府が税金で中抜きすることなく、丸ごとここに参加した生活者へ分配されるのです。

逆にいえば、この分配は長期投資に参加しなかった人には一切得られないという厳然たる優勝劣敗の政策でもあって、これからの日本社会は高度経済成長期に定着した一億総中流時代が終焉(しゅうえん)し、行動した人のみが報われる適者生存社会へと歴史的大転換期を迎えていることにヤングのみなさんにも気付いてもらいたいのです。

中野晴啓
セゾン投信株式会社代表取締役社長。1963年生まれ。87年クレディセゾン入社。セゾングループ内で投資顧問事業を立ち上げ、運用責任者としてグループ資金の運用等を手がける。2006年セゾン投信(株)を設立。公益財団法人セゾン文化財団理事。一般社団法人投資信託協会理事。全国各地で年間150回講演やセミナーを行っている。『預金バカ』など著書多数。
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