外資系「ブティックホテル」 続々と地方へ進出
日経トレンディの2019年1月号でこれから日本の各分野に起きる未来予測とそのキーワードを特集した。その中から観光分野でのトレンドを紹介する。
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訪日観光客数が順調に伸びるなか、これまで以上に勢力を拡大するのが欧米を中心とする外資系ホテルだ。例えば、世界最大のホテルチェーンである米マリオット・インターナショナルは22年までに12もの施設を新規オープン。今までは東京や大阪など限られた大都市にしか出店していなかったが、福岡などの地方都市や、北海道や沖縄といったリゾート地にも進出する。
すでに運営ホテルがある大都市には、2軒目、3軒目として日本初進出の新ブランドが続々とやってくる。なかでも多いのが個性的なデザインやサービスが特徴の「ブティックホテル」だ。
世界中どこでも同質のサービスが受けられる伝統的なホテルブランドとは異なり、ブティックホテルはその土地の文化を取り入れ、一つ一つが異なるデザインやコンセプトでまとめられている。サービスも画一的ではなく、顧客の要望に応じて臨機応変に対応する。よそ行きの雰囲気が強い既存のホテルとは異なり、まるで自宅のようにくつろげるライフスタイル型が売りだ。
マリオットが20年に東京の銀座と虎ノ門にオープンさせる「エディション」や、同じく20年に新宿にオープンするインターコンチネンタルホテルズの「キンプトン」は、どちらも歴史が浅いブランドながら、最上位に位置づけられるラグジュアリーブランド。21年に大阪に進出する「W」は、若者好みの大胆なデザインで世界中を席巻しており、日本でも話題を呼びそうだ。
1999年にシアトルで創業し、現在米国と英国に9施設を展開するブティックホテルチェーン「エースホテル」も19年、遂に日本上陸。外装デザインに有名建築家の隈研吾氏を起用し、歴史的建造物である「旧京都中央電話局」をリノベーションする。アジア唯一ということもあり、国内外から旅行客を集める。
迎え撃つ日本勢も、個性的なホテルを次々とオープンさせる。17年に東京・渋谷の「TRUNK(HOTEL)」で新規参入したテイクアンドギヴ・ニーズは、今後10年間で10施設を展開すると発表。古い建物をリノベーションしたホステルなどを手がけてきたUDSは、温泉旅館とビジネスホテルを融合させた「ONSEN RYOKAN YUEN」の展開を目指すという(次ページに梶原文生氏のインタビュー)。安定した接客水準など、ホテルに安心感を求めて選ぶ時代はもう終わった。これからは、滞在中にどれだけワクワクした体験ができるかがカギになる。
【インタビュー】和のテイストで外資系と差別化~UDS会長・梶原文生氏
――古い建物をリノベーションしたホテルや、宿泊者と地元の人の交流を生み出すホステルなど、個性的な施設を生み出してきました。
19年春に東京・新宿にオープンする「ONSEN RYOKAN YUEN SHINJUKU」は、入り口は和風の平屋建てですが、奥に高層棟がある「新しい旅館」。部屋には靴を脱げる小上がりを設けます。露天風呂を設けますので、部屋にはシャワーだけのコンパクトな造りに。そのぶん、ビジネスホテル並みの価格設定にします。別の場所での展開も検討していきたいと考えています。
――19年4月に東京・銀座に開業する「MUJI HOTEL GINZA」の企画・運営も手がけます。
無印良品のインテリアを入れて、「MUJI」の看板を付けるだけではありません。無印良品の概念をどう反映させるのか、良品計画と議論して進めています。例えばバスタブは無印良品にないので、同社監修のもと、我々がデザイン。無印良品で売られているアイテムの体験の場でもあり、商品開発の場でもあります。
ホテルには非日常感が不可欠ですが、ゴージャスなのは世界観に合いません。難しい挑戦ですが、無印良品の日常感を残しつつ、わくわくできる空間づくりを目指しています。
[日経トレンディ2019年1月号の記事を再構成]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
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