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「デート商法」で不動産を購入 契約は取り消せるか? 弁護士 志賀剛一

2018/12/6

ただし、その事件では銀行がそこまで関与していたとは認定できないとして金銭消費貸借契約は有効と結論付けていますし、無効だから借りたお金を返さなくてよいという法的判断はなかなか難しいのではないかと思います。デート商法が違法であるとはいえ、銀行から何千万というお金を借りてまでワンルームマンションを買うという行為は消費者自身が途中で目を覚ますべきでしょう。

■改正法、19年6月に施行

さて、デート商法に関しては、消費者契約法の改正で立法的な解決が図られようとしています。ただし、改正法の施行は2019年6月15日なので、相談のケースでは適用されません。2001年に施行された消費者契約法は、民法の原則である「契約自由の原則」を制限し、不当な勧誘による契約の取り消しや不当な契約条項の無効などを規定することで消費者保護を図る法律です。

この法律が18年6月に改正され、(1)消費者が社会生活上の経験が乏しいことから(2)勧誘者に恋愛感情その他の好意の感情を抱き、かつ勧誘者も同様の感情を抱いている者と誤信していることを(3)当該事業者がこれを知りながら(4)これに乗じて当該消費者契約を締結しなければ当該勧誘を行う者との関係が破綻することになる旨を告げる行為――が取り消すことができる行為の類型として追加されました。

(2)~(4)がデート商法を指しているのは理解できるのですが、(1)の要件を見てあぜんとしました。この条項により取り消すためには「消費者が社会生活上の経験が乏しいこと」を主張立証しなければならないのです。この文言を素直に読むと、若年者にしか適用されないのではないかとの疑問がありますが、この法案の国会審議中、担当大臣が「(対象には)高齢者も含まれる」と発言していることから、年齢は無関係ということになります。

■恋愛経験の乏しさを立証する必要性も?

そうなると、この条項の適用を受けるためには、ズバリ言えば当該消費者が「今まで異性にモテなかった」ということを主張し立証しなければならず、訴訟の本人尋問で本人の恋愛経験(がないこと)を語ってもらう必要がありそうで、とても切ない訴訟になることが予想されます。恋愛経験があっても引っ掛かる人は引っ掛かると思うのですが……。なぜこんな要件を課したのでしょうか。

志賀剛一
志賀・飯田・岡田法律事務所所長。1961年生まれ、名古屋市出身。89年、東京弁護士会に登録。2001年港区虎ノ門に現事務所を設立。民・商事事件を中心に企業から個人まで幅広い事件を取り扱う。難しい言葉を使わず、わかりやすく説明することを心掛けている。08~11年は司法研修所の民事弁護教官として後進の指導も担当。趣味は「馬券派ではないロマン派の競馬」とラーメン食べ歩き。

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