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ショコラ大国フランスに挑む 明治のカカオ菓子職人

カカオ全体の0.002%しかないという希少なホワイトカカオの生産にメキシコで乗り出した明治

「我々の武器」と宇都宮さんが断言するホワイトカカオは、「カカオ全体の0.002%しか存在しない」。希少性が高く、世界の一流ショコラティエでさえ入手困難という。明治は3年半前、メキシコでそのホワイトカカオのみの農園作りに乗り出した。「カッセル会長に『君はスーパーマンだ。奇跡的なことをしているのが分かっているのか』と言われました」と笑顔を見せる。

メキシコにこだわるのにも訳がある。「スペイン人が1519年にメキシコに上陸した際に、ヨーロッパに初めてカカオを持ち帰ったと言われています。その後、ナポレオンらが口にしていたのがおそらくホワイトカカオだったであろうと。我々は今、それをよみがえららせようとしているんです」。

実際にカカオと食べ比べると、違いは歴然。通常のカカオは、苦みと渋みがあり、コーヒー豆をひいたような香ばしさがある。一方、メキシコ産のホワイトカカオは、思いのほか口溶けがなめらかで、フランス人が好む酸味を、かすかだが、しっかりと感じさせる。

アンペリアル・ショコラには一般市民も多く来場 明治のブースで来場者に丁寧に説明する宇都宮さん

続いて、このホワイトカカオ70%の板チョコを試食する。いわゆるダークチョコレートをイメージして口に含むと、間違いなく驚くだろう。甘く、まろやか。まるでミルクチョコレートなのだ。友人と明治のブースを訪れたフランス人のナタリー・テュリエさんは「ホワイトカカオなんて一度も聞いたことがない。とても興味深いし、新境地を開拓する斬新な取り組みだわ」と興奮気味に語ってくれた。

「単一品種にすると、病気にかかり全滅するリスクがあります。でも、そのリスクをとることに決めました。量ではなく質で、世界で戦っていきたい。これができれば世界一になれます」。宇都宮さんの言葉に熱がこもる。生産規模を大きくすることにより、非常に高価なホワイトカカオを手の届く商品にしていきたいという。同時に、お腹がすいたからつまむ、エネルギー補充に食べるだけではなく、「コーヒーやワインのように、産地や焙煎、貯蔵期間にこだわった嗜好性の高いチョコレートを作りたい」。

1926年に発売された明治のミルクチョコレートは今年で92歳。フランスの詩人で、大正時代に駐日フランス大使として日本に駐在したポール・クローデルも当時、明治のミルクチョコレートに魅せられた一人だったという。「欧州には、支店も販売拠点もありません。今が地固めのときだと思っています。でも、そろそろ一歩踏み出したい」。宇都宮さんの目は先を見据える。

明治のミルクチョコレートが100歳を迎える頃、フランス人が日本発のチョコレートを探し求める姿が見られるかもしれない。

(パリ在住ライター 吉田理沙)


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