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ショコラ大国フランスに挑む 明治のカカオ菓子職人

南米のジャングルで農家の人と一緒になってカカオの開発と生産に取り組んだ宇都宮さん

だが一方で、お世辞にも治安が良いとは言えない南米では、長期滞在すると狙われる。行動パターンを変えつつ、現地に溶け込むべく地道な努力を重ねた。日本を発ち、北米経由で南米のカカオ産地に入る。現地での仕事が一段落すると、そのまま、南米からの直行便が多いスペイン経由で欧州に渡り、良質なミルクを求めてフランスやオランダ、北欧を駆け巡る。「1年間に世界3周した年もありますし、赤道0度から北緯66度に1日で移動した日もあります。(通算)1年半ぐらいは熱帯のジャングルで過ごしたと思います」。まさに体力勝負だ。

南米のカカオ産地では、入念に農園の場所を選び、何をどのようにつくっているのか、農家を一軒一軒訪ねて回った。農家を決めると、カカオを栽培し、採れたカカオは手作業で発酵させ、乾燥させる。現場は赤道直下のジャングルという過酷な環境。朝、腹ごしらえをして現場に入ると、仕事を終える夕方までは何も口にできないという日々を過ごした。

「3年目に入るころには農家さんがだんだん心を開いてくれるようになりました」と宇都宮さん。「仲良くなると、農家さんがコーヒーやスープ、豆ご飯を出してくれるんです。きっと川でくんだお水で作ったものですけど、出してもらったら食べないわけにはいかない。気合で食べました」と苦笑いしながら当時を振り返る。

カカオ作りと並行して、2006年から、品種が豊富な南米5カ国で始めたのが「メイジ・カカオ・サポート」だ。前述のカッセル氏も称賛する取り組みとは一体どのようなものなのか。宇都宮さんはこう説明する。「良いカカオを作ってもらうために、農家さんが困っていることをサポートする仕組みです。例えば、肥料がないとなれば肥料を提供する。樹木を剪定(せんてい)できないと言われれば道具を貸し出す。あるいは一緒に苗選びをする。地道な活動です」。

良いカカオの生産のためには、企業の押しつけではなく、現地の農家をいかにサポートできるかにかかっているという

企業側の押しつけではなく、現地のニーズをくみ取ったサポートを長期的に継続して行うため、農家のモチベーションが上がり、地域が安定する、良いカカオが採れる、という好循環が生まれるのだという。

「ヨーロッパの人にとっては、最終形の商品よりも、どう取り組み、どう作られたかというストーリーが大事」と宇都宮さん。その言葉を証明するように、カカオの実を発酵、乾燥、焙煎(ばいせん)、チョコレートに仕上げて行く過程を展示した明治のブースには、続々と人が集まる。若い女性や親子連れ、年配のご夫婦まで様々だ。興味深そうに代わる代わる試食し、1枚7ユーロ(約910円)の板チョコを購入していくフランス人の姿もあった。

産地と素材には徹底的にこだわった。「現地の農家さんにより近く、より深く入り込んでいる自信があります」。だが、産地別のチョコレートは欧州では目新しくなく、それだけでは世界で戦えない。そこで目を付けたのが、メキシコ産のホワイトカカオだった。

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