「ヨーカドー」のお手ごろスパークリングをランキング
エンジョイ・ワイン(6)
気軽にスパークリングワインを楽しむ人が増えている。その証拠に、スーパーマーケットの棚には様々な種類のスパークリングワインが所狭しと並んでいる。だが、種類が豊富だけに、どれを選んでよいのか迷う人も多いだろう。スパークリングワインが特によく売れるクリスマスシーズンを前に、店頭でよく見かける手ごろなスパークリングワインを試飲し、評価してみた。
まずは筆者を含めた5人のパネルを組織した。全員がシニアソムリエかシニアワインエキスパートの資格を持ち、ワインを飲み慣れている面々だ。
今回、評価したのは、スーパー大手イトーヨーカ堂の実店舗で売られている、原則、1本1000円前後の辛口タイプ8銘柄。ワインは同一店舗でまとめて購入。全員で1本ずつ順番に試飲しながら、自由にコメントを述べ合った後、各自が5点満点で点数を付けた。点数は香りや味わいのほか、価格も考慮した。
以下、8銘柄を試飲順に紹介する。点数は5人の平均。点数横のカッコ内は順位。
(税込み購入価格、以下同じ)
3.2点<4>
スプマンテはスパークリングワインの意味。アスティは北イタリアで造られる、やや甘口のスパークリングワインの総称。同じ北イタリアのプロセッコも世界的に有名だが、店頭になかったので、代わりにイタリア代表として選んだ。
シニアワインエキスパートで、薬剤師の知識を生かした科学的なワイン情報をブログで発信している鈴木明人さんは「口に含むと白桃のような味わいがある。甘口だが酸味もあり、バランスがよい」と評価。味わいに対する評価は総じて高かった。
スパークリングワインのアルコール度数は11%前後が多いが、このアスティは7%。元航空会社の客室乗務員でシニアソムリエの市川朋依さんは「やや甘口なので、食前酒としてもデザートワインとしてもいける。低アルコールなのでお酒の苦手な女子にもぴったり。女子会向き」とコメントした。
2.0点<7>
ゼクトはドイツ産スパークリングワインの総称。ドイツというと甘口の白ワインをイメージしがちだが、最近は高品質の辛口ワインが世界的な評価を得ている。期待してリストに加えたが、味わいの第一印象は異口同音に「苦い」。
ラベルには「やや甘口」「飲み頃温度6℃前後」と書いてあり、それを見て再び全員が首をかしげた。少なくとも飲んだ感じは甘口でないし、6℃というのは、いささか冷やし過ぎで、苦みが一層際立つとの意見が相次いだ。
シニアソムリエで、ワインスクールの講師もしている内田一樹さんは、「甘い和菓子に渋いお茶が合うように、このワインもスイーツとなら合うかもしれない」と優しくフォローを入れたが、2000円近い値段も響き、全体では厳しい評価となった。
3.2点<4>
人気のCAVA(カバ)。瓶詰め後に再発酵させて泡をつくり出す手法で製造したスペイン産スパークリングワインの総称で、ラベルにCAVAと見やすく表示してある。シャンパン方式とも呼ばれ、瓶内二次発酵特有の複雑な味わいが特徴だ。
シニアワインエキスパートで酒販会社に勤務する泊里年章さんは「幅広い料理に合うし、コスパもいい」と評価。ブドウ品種由来のかすかな「ゴム臭」が苦手でなければおススメということでパネルの意見が一致した。
2.4点<5>
これもカバだが、コルドン ネグロと比較すると、「味わいが硬い」(内田さん)「コルドン ネグロのほうが味わいのバランスがよい」(泊里さん)など、価格面も含めてコルドン ネグロに軍配が上がった。
1.8点<8>
セブン&アイグループのオリジナル商品で、輸入ワインを国内で瓶詰めしたもの。カリフォルニアワインが原料のせいかアルコール度数が13%と高く、その分、香りもボディーもしっかりという評価。ただ、「ガスがすぐに抜ける」(鈴木さん)など、スパークリングを名乗るわりには泡の弱さを指摘する声が多かった。
非発泡の「ヨセミテ・ロード シャルドネ」は大人気商品で、「ヨセミテ・ロードが好きな人は、このスパークリングワインもおいしく飲めるのでは」(市川さん)など、飲み手によって評価が分かれるとの評価で一致した。
3.4点<3>
世界的なシャンパンメーカー「モエ・エ・シャンドン」グループがオーストラリアで造る瓶内二次発酵方式のスパークリングワイン。1000円台のオーストラリアのスパークリングワインが棚になく、やむを得ず、産地のバランスを優先するためリストに入れた。
果実味や酸味などのバランスが非常によく、「スパークリングの王道。迷ったらシャンドン」(鈴木さん)など、全員が味わいを高く評価。ただ同時に、「優等生すぎて個性が不足」(泊里さん)との辛口評価も多く、価格面も含めたら3位に甘んじる結果となった。
4.2点<1>
平均点が一番高かったのが、このチリのスパークリングワイン。「バランスがよい」(内田さん)「酸が素晴らしい」(鈴木さん)「シャンドンよりおいしい」(泊里さん)など、全員が称賛した。
ブドウ栽培に理想的な気候のチリでつくられるワインは平均して質が高く、値段も安いため、日本ではカジュアルなワイン愛好家を中心に「安旨(やすうま)ワイン」として高評価を得ている。安旨の評価は、スパークリングワインにも当てはまるようだ。
3.8点<2>
2位もチリ。サンライズと比べると味わいのバランスでやや劣るが、「香りが華やかで女子向きかもしれない」(市川さん)との意見も。内田さんは「サンライズは繊細な味わいの料理、アルパカはバター料理にあいそう」と違いを表現した。
スパークリングワインは泡の効果でワインの味わい全体が軽やかになるため、様々な料理と合わせやすいという特徴がある。これからの季節、クリスマスの演出役としてだけでなく、おせち料理に合わせて飲む酒としてもお勧めだ。
(ライター 猪瀬聖)
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