音楽フェス動員数は頭打ち? 無料生配信でファン開拓
今や音楽フェスは年間を通して開催される定番イベントの1つ。そこで2018年に開催した音楽フェスの動員数を調査し、ランキングを作成したところ、1位は27.6万人を集めた「ロック・イン・ジャパン・フェスティバル」だった。各フェスが取り組んでいる動員施策で、近年増えているのが動画配信サイトを利用した「無料生配信」。動画で疑似体験してもらい、行きたくなる人を増やそうとしている。
「音楽フェス動員数ランキング2018」の1位は「ロック・イン・ジャパン・フェスティバル」(27.6万人)。茨城県ひたちなか市で行われ、ロックにJ-POP、女子アイドルまで様々なジャンルの邦楽アーティストが出演する。18年はキャリア45年で初の夏フェス出演となった松任谷由実も名を連ねた。
2位は「a‐nation」(18.8万人)。17年は、味の素スタジアムでの東京公演のみだったが、今年は大阪、長崎でも開催するなど規模を拡大(三重公演は台風で中止)。東方神起や浜崎あゆみなどが、ヘッドライナーを務めた。
3位は「サマーソニック」(13万人)。千葉・幕張メッセと、大阪・舞州スポーツアイランドで同時開催する都市型フェスで、今年はベックなどのベテラン勢に加え、チャンス・ザ・ラッパーなどの若手も出演した。
トップ10を見ると、17年と比べて横ばいのものが多く、動員を減らしたフェスもある。スタートから10年、20年が経過した老舗では、新たな客層の開拓も課題だ。そこで、各フェス共に近年様々な動員施策に取り組んでいる。
フジロック初の無料生配信に大反響
新潟県・苗場スキー場で行われ、今年22年目を迎えた4位の「フジロックフェスティバル」は、16年から中学生以下は保護者同伴であれば無料に。5位の音楽とアートのカルチャーフェスとして横浜みなとみらいで開催する「GREENROOM FESTIVAL」は、物販エリアを年々拡大することで客層の幅を広げている。他にも、7位のアイドルフェス「TOKYO IDOL FESTIVAL」は、18年から携帯電話でのステージ撮影を限定解禁、SNSによる宣伝効果を生んでいる。
近年、徐々に広がりを見せるのが、動画配信サイトを利用した「無料生配信」だ。「フジロックフェスティバル」は今年初めて実施。YouTubeに2つのチャンネルを設け、視聴者数が6万人を超える時間帯もあるなど、大きな反響があった。
無料生配信で先行するのは14年のスタート時から行っている「ULTRA JAPAN」。その意図を、同フェスの担当者は、「会場に来てもらえなくなるのではという意見もありますが、結局、フェスには来る人は来るし、来ない人は来ない。動画で疑似体験をしてもらい、行きたくなる人を1人でも増やすことに注力している」と明かす。配信チャンネルも年々増やしており、YouTubeに加え、16年からは若者層を意識してLINE LIVE、18年は新たにTwitchでも生配信を行った。
今後、他の音楽フェスでも無料生配信は、動員施策の1つとして注目を集めそうだ。
(ライター 中桐基善)
[日経エンタテインメント! 2018年12月号の記事を再構成]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。