しゅんしゅんクリニックP 現役医師が、なぜ芸人に?
7月放送の『さんまのお笑い向上委員会』(フジテレビ系)に、明石家さんまやひな壇芸人と絡む、セットの外にいる"モニター横芸人"の1人として初出演。ニューカマーにしてスタジオ中の爆笑をさらい、早くも番組常連となったのがしゅんしゅんクリニックP(以下、しゅんP)だ。8月には秋元康プロデュースのアイドルユニット「吉本坂46」に、芸人ではトップの得票数でメンバー入りするなど、上昇気流に乗っている。
『お笑い向上委員会』でも披露した十八番のネタは、軽快な音楽に乗せて"医者あるある"を歌う「ヘイヘイドクター」。「外科医は酔ったら裸になりがち」「整形外科医はチャラいやつ多い」といった多少の偏見が混じったフレーズと、手足を大きく動かすダンスで笑わせる。
一方で、「ダンスが強すぎて歌が全然入ってこない」などと周囲の芸人にツッコまれて戸惑う姿も愛嬌(あいきょう)たっぷりだ。
そんなしゅんPが他の芸人と一線を画するのは、医師免許を持つ本物の医師であること。本職だけに医療関係の決めフレーズは説得力とおかしみが増幅される。ネタの内容から医療関係者のファンも多く、このところ「医大や看護学校の学園祭から次々にオファーが舞い込んでいる」という。
お笑い好きになったのは小学生の頃。「最初は『ごっつええ感じ』でダウンタウンの松本人志さんが好きになって。自分もやってみたいと思うようになったのは『M-1グランプリ』でフットボールアワーさんが優勝した時(2003年)。漫才ってこんなに面白いんだと気付かされました」
漫才への憧れは医大を卒業しても変わらず、2年間の研修医期間が終了してから吉本総合芸能学院(NSC)に入学。「人生後悔したくないから、30歳になるまでにチャレンジしてみようと思って。ダメだったらやめればいいという軽い気持ちではありました。イヤらしい話、医師免許も持ってるので(笑)」
NSC卒業後は、医師と美容師による異色のコンビとして劇場を中心に活動したが、16年に解散。「3年前のM-1で準々決勝までいったんですが、その翌年に方向性の違いで解散しました」。解散後はピン芸人の道を選んだ。「まだまだお笑いでやり残したことがあったので、引退は考えなかった」と言う。
「シュッ」と口で言いながら、外科医が手術前に取るポーズを繰り出すのがお決まり。「SNSで火がつくのが今っぽいと思っていて、スマホ動画を前提としたネタが中心です」「今つくっている『ゴーゴーナース』は看護師さんの"あるある"をインスタグラムで募集しました。"夜勤明け、金銭感覚狂いがち"とか。800件以上コメントが届いて愚痴発散所みたいになっちゃいましたが、相当リアルな声が聞けました」
目指す芸人像は「医療のことを笑いで伝えられるジャーナリストのような芸人。ためになるけど面白い、みたいな存在になれたら最高です」と明かす。「医者と芸人の仕事を半々でできるのが理想」と語るしゅんP。この冬は吉本坂46での活躍を期待しつつ、次の一手となる「ゴーゴーナース」の展開にも注目だ。
(「日経エンタテインメント!」11月号の記事を再構成 文/遠藤敏文 写真/中村嘉昭)
[日経MJ2018年11月30日付]
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