レクサスが挑む 脱「ドイツ」的クルマの未来

そのひとつは典型的なSUVが持つ力強さや道具感みたいなところを、切り捨てるのではなく、いかに適切にまとっていくか。つまり新しいパッケージであっても、そのイメージは生かすという設計です。

チーフエンジニアは人々がSUVに引かれる理由に、普通のクルマとは違ったこれに守られている、頼れる感じがあることを挙げています(記事「レクサスUX 女性チーフがこだわる抜け感と守られ感」参照)。今日びのレクサスのデザインとしてはシンプル指向だと思いますが、その塊感の中に力感が感じられたなら、作り手の狙いは成功しているということでしょう。

SUVにハッチバックの操作性を

そしてもうひとつは適切な車高=重心も活かしながらのシーンを選ばぬ軽快な走りです。ここでUXが目標にするのは、それこそVWゴルフのような標準的なハッチバックモデル。つまりSUVとは完全に一線を画した敏しょうさや安定感の確保を狙っています。

UXの基本骨格は現行プリウス以降からトヨタ・レクサスの双方で(トヨタ関係者はこれを「コーポレートで……」と称します)共有しているものですが、レクサス側のそれは特殊溶接や構造接着剤などの使用域を増やして剛性を高めたオリジナルの仕様となっています。その差は普段乗りでの静粛性や快適性などにもしっかり反映されており、特に乗り心地については上位車種にあたるNXにも劣らないスッキリとした印象です。

オンロードのコーナリング性能はまさにUXが意図したところで、山道では背の低いハッチバックとなんら遜色のない走りをみせてくれます。

ここで光るのはまったく新しい設計のガソリンエンジンとCVTミッションの組み合わせで、その小気味よさは販売的主力となるだろうハイブリッドとは一線を画するものです。しかしUXにとってそれは余技のひとつであり、本領はむしろ何の気もなく普通に走っている時のフィーリングでしょう。思い通りに加減速できて、タイヤが路面をしっかり捉えている感触を伝えながらスイスイ曲がってくれる、こういった「速い遅い」的なベクトルではなく、気持ちの良さで走りを測れば、UXは相当良くできたクルマだと思います。

11月27日に販売が始まったUXですが、予約段階での購入者の年齢層は幅広いようです。若年層はもちろん、業界的にはダウンサイザーと呼ばれている大型高級車からの乗り換え組にも人気だと聞きます。

ESとUX、ドイツ勢とは一線を画するレクサスの新しい試みが果たしてどのように市場で評価されるのか、注目していたいと思います。

「UX」の車両開発責任者はトヨタで初めて生え抜きの女性執行役員になった加古慈氏が務めた(11月27日、東京・日比谷の「レクサスミーツ」)
渡辺敏史
福岡県出身。出版社で二・四輪誌編集に携わった後、フリーの自動車ライターに。主な著書に、2005~13年まで週刊文春に連載した内容をまとめた「カーなべ」(上下巻、カーグラフィック)。
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