働き方・学び方

長寿企業を変える

「バーミキュラ」生んだ職人魂 兄弟経営で町工場復活 愛知ドビー(上)

2018/12/4

愛知ドビーの土方邦裕社長(右)と土方智晴副社長=愛知ドビー提供

つぶれる寸前だった鋳物メーカーが、1台のホーロー鍋でよみがえった。愛知ドビー(名古屋市)が開発した「バーミキュラ」。2010年の発売以来、累計38万台以上を売り上げ、ミシュランで星を獲得しているシェフも愛用する。社長は元商社の為替ディーラーで行動派、副社長は元トヨタ自動車の管理部門で採算企画などを担当していた熟慮型。キャリアも性格もまったく違う兄弟は、どのようにして町工場を変えていったのか。

■職人のほとんどは未経験者を採用

開発に3年かけたバーミキュラ=愛知ドビー提供

火花を散らす溶解炉。炉の中には、1500度で溶かした鉄に13種類の金属を配合したバーミキュラの原料が入っている。溶かした原料を、取鍋(とりべ)と呼ぶ容器に移し替えて砂型へと運ぶのだが、その間にも中の温度は刻一刻と変化する。サラサラに溶けた鉄も、数十度下がるとドロドロに。職人たちは非接触センサーで都度、温度を確かめながら手際よく作業を進めていく。

砂型に流し込む際は、静かに早く。3秒では短く、4秒では長すぎる。鋳物の精度を左右するのは温度管理だ。約1年半前までは、2人がかりで吊した取鍋を傾けながら流し込む速度や勢いを調節していたが、現在は自動化されている。赤く燃えたぎる鉄が型に流し込まれると、砂が焼ける香ばしい匂いが漂った。

JR名古屋駅から車で10分ほどにある愛知ドビーの本社兼工場。バーミキュラを作る工程は大きく、「鋳造」「精密加工」「ホーロー加工」の3つに分かれる。砂から出してバリを取るまでが鋳造。冷やして型から取りだした鍋は、0.01ミリ以下の精度で加工し、最後は均一に釉薬(うわぐすり)を塗るなどして完成だ。手先の器用さが求められる作業でもあるため、ホーロー加工を担う職人の中には料理人や美容師の経験者もいる。

「職人のほとんどは未経験採用です」と土方邦裕社長。大学を卒業後、豊田通商の財務部門で為替ディーラーをしていたが、01年に退職し、26歳で父親の経営する愛知ドビーに入社した。

同社は1936年、土方氏の祖父が鋳物工場「土方鋳造所」として創業した。繊維産業が盛んになるにつれ、織物の一種であるドビー織の織機を手がけるメーカーへと転身。最盛期には70人近くの社員を抱えたが、繊維産業の衰退とともに事業の縮小を余儀なくされ、鋳物を精密加工して納品する小型部品の下請け工場になっていた。

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