この原稿を書いている11月後半は、私にとって1年の中で最も忙しい季節です。理由は、3月決算企業の第2四半期(7~9月期)決算の取材が本格化する上に、新規株式公開(IPO)企業の取材も集中するからです。
私は企業への直接取材を重視しており、年間で700件以上、経営者やIR(投資家向け広報)担当者の方に当社へお越しいただいてお話を伺っています。決算発表シーズンは、説明会などの後に機関投資家への個別訪問のスケジュールを組む企業が多いため、ワンテンポ遅れて繁忙期が始まり、それが1カ月強続きます。
11月後半に決算とIPO取材がぶつかる
その時期に、年末を控えたIPOラッシュの取材がちょうどぶつかるのです。通常、IPOは上場日の1カ月ちょっと前に発表され、その直後から1週間ほど機関投資家への個別訪問を行うため、年末上場企業の来社は11月後半になるのです。
しかも、IPO取材のアポ取りは、秘密保持などの理由で通常は上場発表後でないとできません。一方、企業の決算取材は1~2カ月前から予定を入れていくため、繁忙期である11月後半のスケジュールはすでにほとんど固まっています。そこに、毎日のようにIPOのニュースが飛び込んでくるのです。
IPOの発表は証券取引所の引け後(取引終了後)に行われます。午後3時を過ぎたタイミングで会議室から部屋に戻ると、最優先で東証ホームページと電子メール、留守番電話をチェックしなくてはいけません。主幹事証券と連絡を取り、他の機関投資家のアポが入る前に、できるだけ広い選択肢からスケジュールを押さえていく必要があるからです。
たまたま空き時間に合えばいいのですが、そうでないときは朝一番や終業時間後に予定を入れたり、他のアポをキャンセルしたりしなくてはいけません。1日4件発表があったりすると、かなりけんか腰で主幹事証券と交渉を行うこともあります。
それでも、IPOは一社で一度しかない貴重な取材機会であり、逃すわけにはいきません。ほとんどの場合、社長が来社されますし、準備も万端に整えられています。