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キャリアの壁をどう破るか

「100年着られる洋服」 作り手の喜びを買い手にも WEF名誉会長・尾原蓉子氏×デザイナー・皆川明氏

2018/12/5

尾原 私が近著で「壁」を破ることをテーマに取り上げたのは、キャリアの「天井」とすると、ものすごく上昇志向でプレッシャーも大きく思われるからです。打破する障害は上位の役職に就くためだけにあるのではなく、新たな事業や新しい分野への挑戦で直面するものが多い。壁はあちこちにあって身近でもあります。皆川さんご自身は、これまでに最大の壁と感じたものは何ですか。

■向いているかではなく、目の前のことに向き合う――キャリア形成の壁

皆川 楽観主義なので、あまり壁だと思ったことはないのですが、物作りの現場をしっかり残そうという意味では、分厚くふわふわした「霧の壁」があって、その中をさまよっているような感じがします。霧がかかって遠くまで見通せないけれど、少し前は見えるから、歩いていける。前に進んでいけば、いずれは抜けられるだろうと思っています。

尾原さんの本を読んで私がいいと思ったのは、壁を破って成功するための方法論ではなく、いかに仕事と暮らしを両立させて、自分らしく生きるかという「意識」に触れているところです。これは、男性も女性も、若い人やキャリアを積んできた人にも大切なことです。

尾原 「仕事とくらしの本」と言っていただき、とてもうれしいです。人は仕事をしながらより良いくらしをつくって、生きている実感と達成感、幸福感を得るものだと思っています。

――働くうえで、私たちはどんな意識を持てばいいのでしょうか。

働く喜びや持続可能性について語り合った

皆川 働く喜びは、社会との接点を持てることにあります。社会ではいろいろなハプニングが起こりますが、それを楽しい環境だと思えばいい。それが前提にないと、やらされ感や対価への不満ばかりが募ります。予想外のことが起こる環境だと認識していれば、それなりに納得できますから。

尾原 働く環境はいろいろなことが起こるから楽しいというのは同感ですが、まだ自分の得意なことが見つからず、何が向いているかわからないと、その手前で立ち止まっている人も多い気がしますね。

皆川 「何が向いているか」を考え始めた時点で、「すべてに向かない」という不安が生まれます。向き不向きという価値基準からいったん離れて、目の前のことにどう向き合おうかと考えていけば、何十年か後に振り返ったときに、豊かな人生経験を積めているはずです。働く姿勢をいかに身に着けるかの問題だと思うのです。

もう一つ大切なのが、お金はビジネスの道具にすぎないので、それを労働の目的にしないこと。働く対価としてもらった道具を使って、どう自分を豊かにするかが問われるのだと思えば、道具の多さや素晴らしさを追わずに、持っている道具の生かし方を考えられるようになります。

尾原 「お金を労働の目的にしないこと」は本当に大切なことですね。purpose(目的)をもって生きること。その「目的」に関わる活動が自分を成長させ、社会への貢献にもなり、生きがいをもたらす。これからは、そんな潮流が時代を動かすように思います。また、皆川さんが言われた「事を解決する方法論は1つではなく、多数派が指示する答の反対側にも別の答がある」というのも、素晴らしい考え方で、本当にその通りです。

この対談シリーズに登場いただいた皆さんが強調されたのは「物事の選択肢は多種多様であり、すべての個人はそれぞれの個性を持っている。他人と違う道を開いて自分の存在感を明示し、磨きをかけて自分のキャリアをつくってほしい」ということでした。読者の皆様が「キャリアの壁をどう破るか」について何かのヒントを得ていただいたとしたら、うれしい限りです。

(文・構成 渡部典子)

ブレイクダウン・ザ・ウォール Break Down the Wall 環境、組織、年齢の壁を破る

著者 : 尾原 蓉子
出版 : 日本経済新聞出版社
価格 : 1,620円 (税込み)


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