【大人の正しい勉強法01】「いつ」勉強したらいい?
■海馬の記憶は睡眠時間に整理され、定着する
勉強内容は時間帯に合わせて変えるのが賢いやり方。睡眠には脳の疲労を取り除く働きがあるため、朝は思考回路がクリアで、脳もしっかり働きやすい。「そのため論述や長文読解など、論理的思考力が必要な勉強は朝するのがベストです」。夜に適しているのは暗記学習。「海馬はその日入力された情報を睡眠中に整理し、保存する。暗記した後にすぐ眠ると、より記憶として定着しやすくなります」。
●覚えたら即寝るべし! スマホを見ていると「記憶の撹乱(かくらん)」が起こる
せっかく暗記しても、寝るまでの間に何か他の情報が入ると、記憶が入り混じる「撹乱」が起きてしまい、覚えたことが脳に定着しにくい。勉強したらスマホは見ず、すぐ寝るのが鉄則。

【大人の正しい勉強法02】「どこ」で勉強したらいい?
■脳が嫌う、“変化”を最小限にする
人の体には本能的に、変化を嫌い、常に同じ状態であろうとする性質がある。いざ勉強を始めようとするとおっくうに感じるのは、この性質のせい。勉強を始めることへの脳のハードルを下げるには、変化を最小限に抑えるのが得策。「カフェや図書館にわざわざ行くより、自宅のいつもいる部屋で勉強したほうがいい。すぐ取りかかれるよう、勉強道具をテーブルの上などに出したままにしておくのも手」。
●トイレや洗面所など毎日「必ず使う」空間も利用しよう
トイレや洗面所などの「いつもの場所」に行くことを、脳は面倒とは考えない。トイレや洗面所の壁に英単語表を張るなどして、脳がストレスを感じない勉強空間にしてしまおう。

【大人の正しい勉強法03】「どうやって」勉強したらいい?
■立ち位置を把握しつつ進み、脳のストレスを減らす
脳の力を引き出す肝は、脳にストレスをかけないこと。いつ学び終わるか予測できない分厚い参考書でいきなり勉強するのは、森をさまようようなもの。まずは地図代わりに薄い参考書を使い、学習内容の全体像を大づかみしよう。「『どこまで学んだか』を常に把握できると、脳はストレスを感じにくい」。
■ミラーニューロンを生かした効率的な脳の使い方
脳には、何かを模倣することを助ける「ミラーニューロン」と呼ばれる神経細胞がある。まねが得意な脳の性質を生かして、習得速度を上げることも可能。「例えば語学なら、聞いた音を即座に追いかけて復唱するシャドーイングを取り入れない手はない。脳が複合的に鍛えられ、脳全体の働きも高まる」。
■脳は「知っている」ことを好ましく思う性質がある
講座やセミナーに予備知識ゼロで臨むのは、学習効率が悪い。脳には知っていることを好ましく思う「ファミリアリティ(親しみ)」という性質があるため、「重要用語などに事前に目を通すと、授業中、脳はそれを『すでに知っている→好き』と感じる。その結果、学んだ内容が脳に、より定着する」。
■「機械的暗記」より「省エネ」な記憶法
10代半ばまでは情報を丸暗記する「機械的暗記」が得意だが、それ以降は、語呂合わせやイラストでイメージを結びつけるなどする、「連合記憶」という記憶法が適している。「連合記憶は、すでに脳内にある記憶に結びつけて脳全体を働かせて覚えるので、エネルギー効率のいい、大人の脳に向いた記憶法」。
■無意識でも、脳は常に周囲をモニタリングしている
脳には安静時に働くデフォルトモードネットワークという神経回路があり、自分では意識していなくても常に周囲をモニタリングしている。「集中して勉強する時間が取れないときは、別の作業をしながらでも英語の番組などを流しておけば、脳がその情報を拾い続けるため、一定の効果は期待できる」。
■脳内の「道路」は、繰り返し使うことで強固になる
学ぶことで脳につくられる情報伝達の回路は、いわば道路。「よく使うものは効率良く思い出せる『高速道』となり、使わないものは壊される」。物事を記憶するには、同じ情報を繰り返し学ぶほかない。効率的な暗記方法は、「3日連続復習して回路を強め、1カ月後におさらいして回路をさらに強める方法」。