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エイズの今 発症・他者への感染も早期治療で防げる

Dr.今村の「感染症ココがポイント!」

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NIKKEI STYLE

日経Gooday(グッデイ)

気になる感染症について、がん・感染症センター都立駒込病院感染症科部長の今村顕史さんに聞く本連載。今回は12月1日の「世界エイズデー」にちなんで「HIV感染症/エイズ」を取り上げる。かつては「エイズ=死」というイメージがあったが、治療が飛躍的に進歩した今では、エイズの発症を抑えることができるようになっている。一方、根強い偏見や無関心が、早期発見・治療の妨げとなり、新たな課題が生まれてきている。そんなエイズの現状を、正しく知っておくことから始めよう。

【ココがポイント!】
●「エイズ(AIDS/後天性免疫不全症候群)」とは、「HIV(ヒト免疫不全ウイルス)感染症」が進行した状態のこと
●かつては合併疾患により死亡するケースが多かったが、早期診断・治療により、エイズで命を落とすケースは激減している
●治療薬の進歩で、薬の数や内服回数が少なくて済み、副作用も抑えられるようになった
●日本では毎年約1400人が新たにHIV感染症と診断されるが、その3割はすでにエイズを発症しており、診断の遅れが大きな問題となっている
●治療の進歩や患者の高齢化により、エイズ以外の病気の治療が必要になるケースが増えているが、患者が受診を希望しても断られることも多い
●感染しても、治療をすれば血液中にHIVが見つからないレベル(検出限界以下)に抑えることができ、パートナーへの感染もほとんど阻止できる。ただし、コンドーム使用などの予防も必要
●HIVに感染しても、数年から十数年は症状が全く出ない「無症候期」がある。自覚症状がなくても、感染のリスクがあれば検査を

「エイズ」と「HIV感染症」の違いは?

――12月1日は「世界エイズデー」。日本各地では12月を「エイズ予防月間」として、様々な啓発が進められています。HIV感染を公表して亡くなったロックバンド・クイーンのボーカリスト、フレディ・マーキュリーの半生を描いた映画「ボヘミアン・ラプソディ」も大ヒットしているようです。ということで、今回は「エイズ」についてお話を伺いたいのですが、エイズのことを「HIV感染症」ということもありますよね。そもそも、エイズとHIV感染症は同じなのでしょうか。それとも、何か違いがあるのでしょうか。

ではまずは、言葉の意味を整理するところからお話ししていきましょう。HIV感染症は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)によって起こる感染症です。HIVに感染すると、ウイルスなどの病原体と闘い、病気を防ぐ体の免疫機能が、数年から数十年の間に徐々に低下していきます。免疫がかなり低下すると、脳、肺、消化器、皮膚など、体の様々なところに病気を起こすようになります。そして、免疫の低下によって病気を発症した状態を「エイズ」と呼びます。エイズとはつまり、HIV感染症が進行した状態のことを意味します。

日本ではエイズ発症と診断するために、ニューモシスチス肺炎、トキソプラズマ脳症、カポジ肉腫など23の病気が指標とされていて、HIV感染によって免疫が低下し、23の病気のいずれかを発症した時点で「エイズ発症」と呼ぶことになっています。

HIVに感染しても、普通に生活できる時代に

――エイズ発症となると、やがては亡くなるケースが多いのでしょうか。

かつては、免疫が低下して起こるこれらの合併疾患などが、死亡の大きな原因となっていました。「エイズ=死」というイメージがあるのは、そのためです。しかし、HIV感染症の治療が大きく進歩した1996年以降は、HIV感染を早期に診断し、薬による治療を開始することができれば、ウイルスの増殖を抑えて免疫が低下するのを防いだり、一度低下した免疫を回復させたりすることもできるようになっています。

免疫が低下しなければ、命を落とすような重篤な病気を発症することもありません。HIV感染症は今や、治療薬によってコントロールできる病気となっています。エイズを発症しても命を落とすケースは格段に減っていますし、早期に診断して治療を開始すれば死なない病気になっています。薬の服用を続けていれば、通常と変わらない生活が送れますし、仕事を続けることもできるのです。

――治療薬はたくさん服用しなければいけないのでしょうか。

HIV感染症の治療薬は抗HIV薬と呼ばれていますが、かつては複数の薬を、1日に何度も服用する必要があり、副作用もつきものでした。しかし、96年に3剤を併用する抗HIV療法(ART=Anti-Retroviral Therapy)が開発され、その後も薬の開発が進んだことで、1度に服用する薬の数も、1日の服用回数も少なくなり、副作用も抑えられるようになりました。現在では、複数の薬を組み合わせた合剤も開発され、1日に1回、1錠だけの服用で済む薬も増えてきています。

――治療による負担はかなり減っているのですね。HIV感染を予防するワクチンなどもできているのでしょうか。

HIVは人から人へ感染するウイルスなので、本来はワクチンでの予防が有効です。ただ、残念ながら開発が非常に難しく、治療薬が進歩した今でも、一般へ実用化されたワクチンはいまだに存在していません。一方、後述する通り、早期のHIV治療開始によってパートナーへの感染をほとんど阻止できることが分かっています。そのため、HIV感染者が多い国や地域では、抗HIV薬による治療を予防としても利用しようという「予防としての治療(TasP=Treatment as Prevention)」が進められています。

HIV感染症は、結核とマラリアと並ぶ世界三大感染症の1つで、UNAIDS(国連合同エイズ計画)の報告によれば、2017年末時点でのHIV感染者数は世界で約3690万人とされています。しかし、TasPが進められてからは、新規のHIV感染者数は減ってきています。UNAIDSによれば、2000年のHIV新規感染者数は約300万人だったのに対し、2016年には約180万人で、40%減少しています。エイズ関連の死亡者数も、約150万人から100万人と3分の2に減りました。

日本の課題は「診断の遅れ」と「医療体制」

――日本のHIV感染者数はどの程度なのでしょうか。

日本ではここ数年、新たにHIV感染症と診断される人は毎年約1400人となっています。先ほどお話ししたように、HIV感染が分かった時点で治療を始めることができれば、エイズの発症を抑えることができますが、HIVの新規感染者の約3割は、HIV感染の診断時に、すでにエイズを発症しています。都市部以外では、HIV感染の診断時にすでにエイズを発症しているケースが5割を超える地域もあります。治療が進化している一方で、診断の遅れが大きな問題となっています。

日本では治療の進歩によって、新たな課題も生まれてきています。これまでは、HIV感染症と診断されると、都道府県が定めたエイズ拠点病院を紹介され、そこで治療が行われてきました。しかし、近年は治療薬によってHIVを検出されない程度にまで抑えられるようになり、エイズ治療よりも他の病気の治療が必要になることの方が相対的に多くなっています。

例えば、歯の治療や腎臓病の透析治療などは、遠くにあるエイズ拠点病院にわざわざ通うより、自宅や職場の近くの医療機関の方が通院しやすいですよね。ところが、HIV感染者が受診を希望しても、エイズ拠点病院ではないことや「診療したことがない」といった理由で、診療を断られることがあるのです。HIVは血液での感染リスクが肝炎ウイルスなどより低いにもかかわらずです。

東京都の場合は、東京都が東京都歯科医師会に委託して「東京都エイズ協力歯科医療機関紹介事業」を行っており、主治医に相談をすると、エイズ協力歯科医療機関として登録されている歯科医院を紹介される仕組みになっています。ただ、登録している医療機関は100カ所程度と、東京都に存在する歯科医院の数からすればまだまだ少ない状況です。

また、HIV感染者の高齢化も進んでいて、がんや脳梗塞といった病気の治療が必要になるケースも増えてきています。今後は長期療養病院や在宅医療などと連携した医療体制を整備する必要があるでしょう。

治療をすればHIVは検出されず、感染もしない

――先ほどHIVの感染リスクについて触れられていましたが、もう少し詳しく教えてください。

HIVはウイルスを含む血液、精液、膣分泌液などが粘膜や傷口に触れると、感染するリスクがあります。日本では、HIV感染者の多い国や地域と比べると、薬物使用による感染や母子感染は圧倒的に少なく、感染の原因は性行為によるもの、特に同性と性行為の経験がある男性が多くなっています。そのためか、一般の人には根強い偏見があり、医療者でも正しい知識のない人もいます。

HIVは、インフルエンザのようにくしゃみや咳(せき)などによる飛沫感染はしませんし、唾液や汗でもうつりません。性行為の際はコンドームをすれば感染を予防できますし、先ほどお話しした通り、血液に触れた場合の感染リスクは、肝炎ウイルスより低いことも分かっています。

こうした正しい知識を広めて、HIV感染者への差別や偏見を減らすために、今は「U=U」というキャンペーンが世界的に展開されています。これは「Undetectable(検出されない)=Untransmittable(感染しない)」を表していて、HIVに感染しても、治療をすれば血液中にHIVが検出されないレベルになり、性行為でも感染しないような状態となることを意味しています。ただし、梅毒などHIV以外の性感染症のリスクもあるため、このことでコンドームなどでの予防が不要となるという意味ではありません。

HIVに感染すると、急性期と呼ばれる初期にはインフルエンザのような症状が出ることがありますが、その割合は50%程度です。また、初期に症状が出ても自然によくなってしまい、その後は数年から十数年の長期間、症状が全く出ない「無症候期」に移行します。ですから、自覚症状がなくても、以下のような項目に身に覚えがあれば、HIV検査を受けてみてください。

【HIV検査を受けることが特に勧められる人】
●同性と性行為の経験がある男性
●感染しているかどうか不明な不特定多数の人との性行為を経験したことのある男性・女性
●梅毒に感染したことがある人
●性行為でB型肝炎、C型肝炎、アメーバ症などに感染した人
●コンドームを使用しないリスクの高い性行為の経験がある人

なお、HIV検査を実施している機関や相談窓口は「HIV検査相談マップ(全国HIV/エイズ・性感染症検査・相談窓口情報サイト)」(https://www.hivkensa.com)で検索できます。

(ライター 田村知子、図版作成 増田真一)

今村顕史さん
 がん・感染症センター都立駒込病院感染症科部長。1992年浜松医科大学卒業。駒込病院で日々診療を続けながら、病院内だけでなく、東京都や国の感染症対策などにも従事。日本エイズ学会理事などの様々な要職を務め、感染症に関する社会的な啓発活動も積極的に行っている。自身のFacebookページ「あれどこ感染症」でも、その時々の流行感染症などの情報を公開中。都立駒込病院感染症科ホームページ(http://www.cick.jp/kansen/)。

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