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カリスマの直言

ゴーン・ショック 今こそ渋沢栄一の理念を(渋沢健) コモンズ投信会長

2018/12/3

仏ルノーとの経営統合を阻止したい日産側が仕掛けた陰謀説も流布されているが、そのような大型案件を実現するためには経営トップの人格が問われてしかるべきだ。

■適材ではない重役に3つのタイプ

栄一は適材でない重役について以下の3つのタイプを指摘している。(1)「取締役もしくは監査役の名を買いたい重役」(2)「好人物だけれども事業経営の手腕がない重役」(3)「会社を利用して自己の栄達を計る踏み台にしようとか利欲を図る機関にしようと考える重役」――だ。

もっとも、(1)については「彼らの浅(せん)なる考えは厭(いと)うべきものだけれども、その希望の小さいだけに、差(さ)したる罪悪を逞(たくま)しゅうするというような心配はない」としており、さほど憂慮していない。

(2)については「そういう人が重役となっていれば、部下にいる人物の善悪を識別する能力もなく、帳簿を検閲する眼識もないために、知らず識(し)らずの間に部下の者にあやまられ、自分から作った罪ではなくとも、ついに救うべからざる窮地に陥らねばならぬことがある」としており、(1)と比べると罪は重いと考えているようだ。

ただ、(2)は意図的に悪事をしたわけではなく、やはり(3)が最も罪が重いと断じている。(3)については「株式の相場をつり上げて置かぬと都合が悪いと言って、実際は有りもせぬ利益を有るように見せかけ、虚偽の配当を行ったり、また事実払い込まない株金を払い込んだように装いて、株主の目をくらまそうとするものがあるが、これらのやりかたは明らかに詐欺の行為である」としており、非常に危惧している。

ゴーン元会長も実際にあった報酬をないように見せかける有価証券報告書の虚偽記載の容疑に問われており、株主の目を欺こうとしたとすれば明らかに(3)の重役に該当する。

■グローバル企業だからこそトップの人格が重要

日産はフランスの国有企業ではなく、あくまでもグローバルな上場会社だ。グローバル企業であるからこそ経営トップとしての人格が重要なのである。ましてや、自身の立場を利用して巨額な報酬を隠したとすれば「integrity」が欠けているといわざる得ない。

Integrityは日本語では「誠実」と訳される場合が多いが、筆者はそれでは言葉の真のニュアンスが伝わらないと考える。誠実を逆に英語で表現すれば「sincerity」や「honesty」になる。

これは人格者の大切な要素に違いないが、integrityはもっと腹の底から湧いてくる魂がこもった気概や闘志を感じる言葉といえる。私はintegrityを日本語で表現すれば「義」に近いと思う。これこそが経営トップに不可欠な要素だ。

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