タレントのセイン・カミュさんにはもう一つ、別の顔がある。一般社団法人障がい者自立推進機構の理事として、障害を持つアーティストの創作活動を応援しているのだ。多くの人に作品を見てもらい、アーティストが報酬を受け取れるようにする取り組みで、参加のきっかけはセインさんの妹の絵が結んだ縁だった。「鳥肌が立つようだった」という体験を語ってもらった。
――現在の活動に取り組むようになったのは、どんな経緯からですか。
「きっかけは(障がい者自立推進機構の創業者理事である)松永昭弘さんとの出会いです。もう8~9年ぐらい前になるでしょうか。中小企業を応援する番組の仕事で、松永さんが経営する企業を取材する機会がありました。取材が終わって、社長室に招かれたときに絵を見せてもらったのです」
「どこかで見た覚えがあるなとは思いましたが、口には出さずに、『作者は誰ですか』と聞いてみました。松永さんは絵の裏側を確認したうえで、教えてくれました。『池田ジャスティーヌさんだよ』『僕の妹です!』。それは鳥肌が立つような経験でした」
――妹さんが描いた絵を偶然、松永氏が持っていたのですね。
「僕の7歳下の妹は知的障害を持っていて、アートを手掛ける障害者が集まる施設に入っています。おふくろは妹にいろんなことをさせていて、その中で実りがありそうなのが絵でした。妹は絵が大好きでしたから。松永さんは妹のいる施設を訪問し、2000点近くある絵の中から4点を譲ってもらったそうです。その中の3点が妹の作品でした」
「それから僕は松永さんと友達になり、一緒に飲みに行ったり、遊びに行ったりする仲になりました。(障害者アーティストの経済的な自立を支援する)松永さんの活動にも賛同して、理事として(障がい者自立支援機構に)加わることになりました」
――どんなところに賛同したのですか。
「松永さんたちはチャリティー(慈善)ではなく、ビジネスモデルとして、絵が『売り物』になる仕組みを目指していました。それを通じて僕も妹の(アーティストとしての)活動の手伝いをしたいと思いましたし、少しでも妹にお金が入るようになればいいなという考えもありました」