佐竹 まず、一般的な禁煙外来では、患者に3カ月間で5回通院していただき、パッチ薬、経口薬などを処方しながら禁煙を目指します。ここで重要なのは、ニコチン依存症の依存には2通りがあるということです。一つは「身体的依存」で、タバコをやめると頭痛、イライラ、吸いたくてたまらない気持ちなど禁断症状が出ます。もう一つは「心理的依存」で、朝起きたときに無意識にタバコに手を出してしまうなど、患者の考え方や生活習慣に起因する依存です。

――そのうち禁煙補助薬で軽減できるのは身体的依存だけですね。

佐竹 その通りです。禁煙治療の多くが失敗しているのは、心理的依存に対するアプローチが弱かったからだといえます。そこで、患者の考え方や生活習慣により深くアプローチするのが「治療アプリ」なのです。患者は、吸ってしまった本数、その日の気分、処方された禁煙プログラムの進捗状況などをスマホで入力。データはクラウドに上げられ、適切なアドバイスが患者に届きます。

「CureApp禁煙」では、アプリと患者がコミュニケーションをとることで、タバコへの心理的な依存を緩和する。

2015年に慶應義塾大学病院で行った臨床試験では、治療アプリを使った群では、使わなかった群と比較して高い治療効果が得られました。2017年の12月からは薬事承認をとるための治験を始めました。治療アプリとしては日本で最初で、2018年中には結果がまとまります。2019年には、公的医療保険が認められることを目指しています。

――「CureApp禁煙」と共に、一般的な健康プログラムとしてのアプリ開発も行っているそうですね。

佐竹 はい。こうした保険適用されるような本格的な「治療アプリ」の開発が私たちの最も重要な仕事ですが、臨床研究するなかで、いいエビデンスが出ているものに関しては病院だけでなく、健康保険組合、企業の人事部、保険会社などを対象に非医療としてのモバイルヘルスプログラムの開発を行っています。

例えば、法人向けの健康増進プログラム「ascure(アスキュア)卒煙プログラム」の提供も、2017年4月より開始しています。同様に、ニュージーランド・オークランド大学が開発したうつ病に対する認知行動療法を取り入れたアプリとオンラインカウンセリングを組み合わせたメンタルヘルスプログラムの提供も行っています。

非アルコール性脂肪肝炎の治療アプリにも挑戦中

――今、医療とICTが急接近しています。その一つが、パソコンやスマホなどを通して、医師の診察を受ける「オンライン診療」です。2015年に解禁されたこの新しい診療に2018年の4月から、健康保険が適用されました。「治療アプリ」とオンライン診療との違いは何でしょうか。

佐竹 オンライン診療は、医師による診療をオンラインで行うものですが、「治療アプリ」は診療と診療の間の医療を担うものといえます。医療従事者の最大の目標は、患者の病気が良くなることです。「治療アプリ」は、ICTによって患者が良くなることを実証したものだといえます。

――治療効果について明確なエビデンスがあることが「治療アプリ」の第一の特徴といえますね。米国では、糖尿病の「治療アプリ」が登場しているということですが、今後、どのような疾患に広がっていくのでしょうか。

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今は医療の変革点、アプリ開発で費用対効果の高い治療に