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九州 味めぐり

福岡・中洲に70年 牛肉ほどけるすき焼き 中州ちんや

日本経済新聞西部夕刊

2018/11/29

真っ赤な九州産の黒毛和牛が鍋の中でじゅうじゅうと音を立て、部屋いっぱいに甘い香りが漂う。福岡の人が「一度は行きたい」と憧れるすき焼きの老舗は、味付けにしょうゆと砂糖しか使わない。味を変えず、福岡・中洲に店を構えて今年で70年になった。

イラスト・広野司

2~4階の座敷席で食べられる看板メニューのすき焼きは、1人前4300円と5400円の2種類のみ。細かく差しの入った牛肉はほどけるような食感で、甘めのタレが溶き卵に絡んで肉の味を引き立てる。1人で2人前をたいらげる人も少なくない。調理をしてくれる、ベテランの仲居さんたちとのやりとりも店の魅力の一つだ。

10年以上前、BSE(牛海綿状脳症)問題を受けて客足が落ち込み、ランチで「すきやき丼」を始めた。1000円ちょっとと手の届きやすい価格は若者や観光客を引きつけ、本家のすき焼きに次ぐ人気メニューになった。1階には今も祖業の精肉店があり、併設するレストランではステーキや焼肉定食などを提供。昼時には地元のサラリーマンが列をつくる。

ここ5年ほど、ほとんどの取材を断ってきた。「ウチはいいから、よそを紹介してあげて」と女将の古賀人美さん。現在、70歳。親から継いだ店に、跡取りはいない。「中洲もずいぶん変わった。この店?どうしようかね」。変えなかった味は、今日もお客さんを引き寄せる。

(中川雅之)

〈なかす ちんや〉福岡市博多区中洲3の7の4 電話092・291・5560

九州 味めぐり」では食べ歩きが大好きな地元在住のライターや日経記者が見つけた九州・沖縄のとっておきの味を紹介します。

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