週末レシピ 失敗なし、濃厚とろうまホワイトシチュー
12月に入り寒さがぐっと増し、街並みはクリスマス一色。そんな日に食べたくなる料理の一つが「ホワイトシチュー」。冷えた体で帰宅すると、「おかえりなさい」の声と共に、食卓では湯気が立ち上がったシチュー皿が出迎えている。こんなテレビコマーシャルを見ると、ああ、今夜はシチューにしようと思ってしまう。
夕方のスーパーで、「ヤッター、今日はシチューだね!」と、元気いっぱいの子供の声が聞こえてきた。そっと横目でカゴをのぞき込むと、肉や野菜などの材料と、シチュールーが入っていた。
私の料理教室では、ホワイトシチューもメニューに載る。ホワイトソースから手作りする本格派だ。ところが生徒さんの中には、今までシチュールーしか使ったことがない方も多い。ホワイトソースはハードルが高いと思われているようだが、そんな初心者でも、失敗しない簡単な作り方を伝授しよう。
まずは、基本のホワイトソースに挑戦だ。
<失敗しないホワイトソース:材料>
タマネギ 1個 / サラダ油 大さじ1 / バター 大さじ4 / 小麦粉 大さじ4 / 牛乳 2カップ / 塩・白コショウ 各適量
(1)鍋にサラダ油と、みじん切りにしたタマネギを入れ、透明になるまでいためる
(2)バターを加えて溶かし、小麦粉を振り入れる。ポテッとするまでいため、そこから3分ほどさらにいためる
(3)冷たい牛乳を注ぎ、ダマにならないように混ぜ合わせる。しっかりと加熱し、塩・白コショウで味を調えて完成
フランス料理では、ホワイトソースをソースベシャメルと呼ぶ。本来、上記のような作り方をしないが、ここでは、家庭でも失敗なく作れるようにアレンジしている。
ホワイトソースのありがちな失敗としては、下記の3点が挙げられる。(a)焦がしてしまう(b)粉がダマになる(c)粉っぽさが残るーー。
焦がしてしまうのは、火が強すぎるからだ。中火で加減しながら様子を見よう。ダマになってしまうのは、牛乳を一気に入れてしまうことが要因。プロであれば、ある程度の量を入れることも可能だが、初心者はこの作業が至難の業なので、3~4回に分けて加えるべし。
粉っぽさが残るのは、作り方(2)のとろみが出た段階で、すぐに牛乳を加えてしまうことにある。粉気を飛ばすようにいためてから牛乳を加える。(3)の段階でも、鍋肌からホワイトソースがはがれるまで、5~10分ほどしっかりと熱を加える。
ホワイトソースをマスターしたら、本題のホワイトシチューに取りかかろう。
<チキンのホワイトシチュー:材料(5皿分)>
ホワイトソース 上記の全量 / 鶏モモ肉 2枚 / タマネギ 1個 / ニンジン 1本 / ジャガイモ 2個 / ブロッコリー 2分の1株 / スープストック 3カップ (ブイヨンの素を湯に溶いて使用)/ 牛乳 2カップ / サラダ油 大さじ1 / 塩・白コショウ 各適量
(1)鶏肉は大きめに切り、塩を振る。タマネギ、ニンジン、ジャガイモは一口大に切る。ブロッコリーは小房に分け、塩ゆでする
(2)熱したサラダ油で、ブロッコリー以外の野菜と鶏肉をさっといためる。スープストックを注ぎ、15分ほど煮込む
(3)ホワイトソースと牛乳を注ぎ、さらに10分ほど煮て、ブロッコリー加える。塩・白コショウで味を調えてできあがり
熱々で、とろけるうまさのホワイトシチューの完成だ。
生徒さんから、「思っていたほど難しくはなかった。復習も兼ねて、自宅で作ってみました」「家族からお替わりがでるほど、好評でした」と、写真が送られてきた。調理師冥利に尽きる瞬間である。
ホワイトシチューは、カレーのように煮込んで一晩置いた方がおいしくなる、というわけではない。そこで残ったシチューのリメイクとして、手軽な「シチューのパイ包み焼き」を作る。
<ポットパイ風ホワイトシチュー:材料(2人分)>
チキンのホワイトシチュー 適量 / 好みのチーズ 適量 / パイシート(冷凍)1枚 / マヨネーズ 大さじ1
(1)耐熱皿にホワイトシチューを入れ、チーズをのせる
(2)パイシートで上部を覆い、マヨネーズを塗り、オーブンで色付くまで焼いてできあがり
パイをのせるだけで、ホワイトシチューが、あっという間におしゃれな料理に大変身する。
ところで、シチューといっても、色は白だけではない。代表的なところでは、茶色いビーフシチュー、赤いトマトシチュー、そして白いホワイトシチュー。茶色や赤色は具材名が料理名になることが多い。しかし、なぜホワイトシチューだけは色が料理名になっているのか。ホワイトソースを使っているからにほかならない。
「何を今さら」とお思いだろう。「ホワイト」と名乗るのであれば、心情としては具材も白に統一したい。そこで、白い材料のホワイトシチューの作り方も紹介しておこう。
<真っ白いホワイトシチュー:材料(4人分)>
ホワイトソース 上記の全量 / 卵 1個 / ボイルホタテ貝 4個 / カットイカ 1カップ / タマネギ 1個 / カリフラワー 2分の1株 / マッシュルーム 8個 / ニンニク 1株 /スープストック 1カップ (ブイヨンの素を湯に溶いて使用)/ 牛乳 2カップ / バター 大さじ1 / 塩・白コショウ 各適量
(1)タマネギはみじん切り。カリフラワーは小房に分ける。マッシュルームは石突を落とす。ニンニクは皮をむく
(2)ホワイトソースに溶き卵を混ぜ合わせる
(3)ホタテとイカをスープストックで2~3分ゆで、取り出しておく
(4)(3)の鍋に、タマネギとニンニクを入れ10分、(2)と牛乳を注ぎ、さらに10分ほど煮る
(5)ホタテとイカを戻し、マッシュルームとカリフラワーを加え5分ほど加熱。最後にバターを溶かし、塩・コショウで味を調えてできあがり
15年ほど前、大手食品メーカーに勤務する、小学生の子供をもつ数人の母親から、「食品会社に勤めているのに、私にはお袋の味と呼べる料理がない」「我が家の食卓には、自社のレトルトや冷凍品が多く登場する」「子供が大人になった時、思い出に残っているようなメニューを教えてほしい」と、相談をされた。そこで、ホワイトシチューの実習会を開催した。
実習会では、手作りでホワイトソースを作り、白い具材をそろえ、差別化を図った。あれから15年。小学生だった子供たちも、成人し就職をしている年ごろだろうか。真っ白いホワイトシチューの話題が、どこかで出ていることを願う。
クリスマスまであと3週間ちょっと。家族や恋人と一緒に、もちろん一人で食べても、熱々のホワイトシチューが心も体も温めてくれるに違いない。失敗を恐れずに、是非チャレンジしてほしい。
(世界料理探究家 T.O.ジャスミン)
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