アニメ『INGRESS』 ゲーム元に世界狙う仕掛け満載
10月からフジテレビの新しい深夜アニメ枠「+Ultra」で放送中のオリジナルアニメ『 INGRESS THE ANIMATION』が注目を集める。原作が『ポケモンGO』で知られる米ナイアンティックが開発・運営するAR(拡張現実)活用の大人気スマホ向けゲームということに加え、3DCGを生かした新表現も話題。世界展開を意識した仕掛けがちりばめられている。
原作は全世界2000万ダウンロードを記録したスマホ向けゲーム『Ingress』。アニメはオリジナルのキャラクターとストーリーで展開する。人間の精神に影響を及ぼすとされる物質「XM」を巡る2陣営の対立に加え、巨大な陰謀と謎、そして数多の人間ドラマを内包した戦いの物語が紡がれる。
制作は3DCGアニメ制作で頭角を現すクラフタースタジオ。監督は、宮崎駿の3DCG短編として話題になった『毛虫のボロ』に参加し、『ソウタイセカイ』(2017年、Hulu)で監督と脚本を務めた気鋭のクリエイター、桜木優平が担当する。
桜木監督が強く意識したのが「世界」だ。「原作は世界的に人気のあるゲームですし、当初からネットフリックスでの配信も決まっていたので、世界を視野に海外ドラマのような仕上がりを目指していました」と話す。
完全オリジナルとなるシナリオには『ファイナルファンタジー零式』などのゲームで知られる月島総記やナイアンティックのスタッフも参加。
「あまり日本びいきにならないようにと考えました。物語は東京から始まり、世界各国の様々な場所や地域に広がっていきます。ナイアンティックさんが入ってくれたことで、日本人だけで考えていたら生まれないセリフも入れられました」(以下、桜木監督)
主要キャラクターの国籍も主人公は日本人、謎のすご腕エージェントが米国人、ヒロインはヨーロッパ人とグローバルに配置されている。
期待されるのが、最新技術を駆使して制作されるクラフターによる通称「スマートCGアニメーション」と呼ばれる3DCG映像だ。スマートCGアニメーションは、日本で普及している手描きのセルアニメに似た絵柄をCGで作るというところから派生し、CGの得意分野を突き詰めていった新しい表現のこと。
「例えばモーションキャプチャーによる人物のリアルな動き、それからフレームレート(動画)を手描きの秒間8枚から24、60枚にできるのは強み。全てデジタル化しているので解像度も高いし、今作はVR(仮想現実)が題材なので相性もいいと思います」
作中では実在する名所や神社仏閣などがリアルに再現され、加えて鍵となる常人には見ることができない未知の力「XM」を見事に可視化。「XMに関してはゲームに準ずることを肝に、実在の場所はロケハンも行い、いかにリアルに描くかを重要視しています」「物語が進むにつれ速度も上がり、壮大な話になるはずです」という。
(「日経エンタテインメント!」11月号の記事を再構成 文/山内涼子)
[日経MJ2018年11月23日付]
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