年金繰り下げ受給の損得 手取りだとこう変わる

2018/12/2
写真はイメージ=PIXTA
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公的年金をもらい始める時期を遅らせて金額を増やす「繰り下げ受給」。1カ月遅らせるごとに受給額は0.7%増える。人生100年時代を迎えて関心が高まっているが、年金から税金や社会保険料を差し引いた手取り額に換算するとどれくらい増えるのかはあまり知られていない。検証してみた。

年金をもらい始めるのは本来65歳からだが、希望すれば66~70歳へ遅らせることが可能だ。しばらく無年金でしのぐ必要がある代わり、その後に受け取る金額は本来の水準より高くなり、その額が終身で続く。

もらい始めてから何年生きれば追いつくかを計算すると約11年11カ月。68歳への繰り下げなら80歳直前、70歳への繰り下げなら82歳直前まで生きれば受取総額が額面ベースで等しくなり、長生きすれば有利になる。長い老後を心配するなら検討したい仕組みだ。

額面を過大視しない

ただし考慮すべき点がある。年金は通常、給付される際に所得税や健康保険料・介護保険料が差し引かれる。老後設計上は繰り下げの効果も手取りベースで考えるのがより望ましい。

表Aでは一定の条件で受給額面ごとに手取りがどうなるかを概算してみた。例えば65歳からの本来受給額面が年210万円の人について、手取りを見ると「191万円」。差額の20万円弱が負担する税・社会保険料にあたる。

この人が仮に受給開始を5年(60カ月)遅らせるとどうなるか。まず額面は42%(0.7%×60)増の約300万円になる。次にこの額を基準として税・社会保険料が引かれる。この結果、手取りは表にあるように「255万円」になる。

つまりこのケースでは191万円から255万円へ34%増えるというのが繰り下げの実質的な効果だ。額面ベースの効果(42%増)に比べるとやや控えめ。損益分岐の時期は約15年と、こちらも額面ベース(11年11カ月)より先になる。繰り下げの効果は過大視せずに冷静に見極めたい。

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