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私のリーダー論

理念は話してこそ伝わる ぴあ社長、社員反乱で気づき ぴあ 矢内広社長(下)

2018/12/6

――若手の映画監督を発掘する目的で77年に始めた「ぴあフィルムフェスティバル(PFF)」を続けるのも、そうした企業理念を映していますね。

■経営危機でも続けたフィルムフェスティバル

「ぴあフィルムフェスティバル」の前身である「ぴあ展」(写真は第2回、最前列左から2番目が矢内氏)=ぴあ提供

「2008年の経営危機の際、PFFは収益を生み出さないので、赤字になった会社では当然やめるべきではないかという議論になりました。しかし、こうした事業は一度やめたら二度と再開できないですし、ぴあがずっと続けてきた意味合いを考えて、予算を半分に縮小したとしても続けるべきだと社内を説得しました」

「我々のビジネスは、人々が文化に触れる機会をつくり、文化を消費することで成り立っています。これに対し、PFFは映画界の新しい才能の発見と育成、文化の創造なんですね。ぴあが目標とする、顧客の人生を豊かにすることのためにはその両方が必要です。会社のあり方そのものが、もしPFFをやめたら変わってしまうんじゃないかと危惧したのです」

――かつてPFFができなくなるという理由で上場を断ったことがあるそうですね。

「チケット事業を始めた80年代に、証券会社の人が次々に来て上場しましょうといわれました。『PFFは利益を生まないけど続けられますか』と聞いたら、みんな口をそろえて、『上場するということは1円でも多く利益を出して株主に還元することなので、それは無理です』という答え。ですから当時は考え方が合わないので上場しませんでした」

「00年前後にまたチケットのシステムを新しくしようと思っていたので再び上場を検討したのですが、そのときには証券会社担当者のPFFに対する見方ががらりと変わっていて驚きました。『今は企業も社会貢献や文化活動が求められる時代になっています。これだけ長期間継続して、安定的な評価を得られているものは続けてもらった方がいい』と異口同音に言うわけですよ。時代は変わったなと思いましたね」

――文化を担うという使命感が強いですね。

「昔、本で読んで感動したのですが、経営学者のピーター・ドラッカーは『利益から物事を考えるのは間違いだ』とはっきり言っています。新しい価値の創造が利益を生み出すと。社会全体としては多く利益を出して株主還元することが一番正しいという傾向がどんどん強まっていくように感じていましたが、本当にそうなのかということを私はずっと思っていました」

「ぴあは世の中の人に支えられている会社なので、社会の公器として存在すべきだろうと、私は自分の経験から思っています。ですから、ステークホルダーで一番大切にすべきはユーザー、続いて取引先、従業員、地域社会ときて、5番目に株主だと株主総会でも話しています。人々が喜んでくれて初めて事業が大きくなり、利益が出て配当に回せる。その順番だと私は思っています」

――昨年、社員に譲渡制限付き株式を無償で配布しました。どんな意図があったのでしょうか。

「役員だけでなく社員にも、会社を支える意識を改めて持ってほしいと思い導入しました。それまで、ぴあの株価がいくらなのか聞かれても即答できる人間はほとんどいなかったのですが、導入したことで社員が株価に関心を持ち始めた。そればかりとは言えないですが、株価はみんなで頑張った結果でもある。そういう感覚を持ってくれるようになったと思います」

矢内広
1973年中央大法卒。在学中の72年に雑誌「ぴあ」を創刊し、74年にぴあ株式会社を設立、社長に就任。84年にチケット流通事業に参入。2003年、東証1部上場。福島県いわき市出身。

(安田亜紀代)

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