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私のリーダー論

理念は話してこそ伝わる ぴあ社長、社員反乱で気づき ぴあ 矢内広社長(下)

2018/12/6

■ぴあは世に出られなかった会社という思い

――矢内さん自身はどんな会社にしたいと思ってきたのですか。

「『ぴあ』は大学生のときに立ち上げた雑誌ですが、本当は世に出られなかったという思いが根底にあります。雑誌のアイデアは良かったのですが、学生ですから流通のことなんてわからなかった。わらにもすがる思いで直談判した紀伊国屋書店の田辺茂一社長が教文館の中村義治社長を紹介して下さり、中村社長が100件以上の書店に宛てた紹介状を書いてくださった」

社員に教わることばかりだと話す

「初対面の一学生がこんなことまでしてもらっていいのだろうかと、その手紙の束を持ったときに足ががくがくと震えたことを今でも覚えています。つまり、ぴあという会社は何もないところから幸運な出合いによって生み出された会社です。私にとってぴあは“授かり物”なのです。会社というのは利益を出して当たり前ですが、それだけじゃないという思いがずっとあります」

――そうした思いが社員には伝わっていなかったということでしょうか。

「私自身は創業からの様々な出会いや経験から、社会があって自分たちがある、社会に役立って初めて自分たちの存在意義があると考えてきました。しかし、社員には伝えきれていなかった」

――どんな企業理念ができたのですか。

「社員は私のインタビュー記事の切り抜きなどを回し読みして、社長は何を考えてきたのかをひもとくところから始めたようで、まとめるまで2年ほどかかりました。利益はしっかりと追いつつ、社会への貢献という考え方も持つという2つを車の両輪として前へ進む会社でありたいとの思いを『ぴあアイデンティティ』という企業理念の形にまとめました」

「さらに『ひとりひとりが生き生きと』という言葉をメインのアイデンティティーとして設定しました。ぴあの顧客に対して、人生が豊かになって生き生きとできるような商品やサービスを提供できて喜んでもらえれば、我々自身が生き生きとできるという意味です。そのための行動指針として、私心を捨て、利他の精神を持って、物事の本質を見つけられるようにする、といったことを『ぴあ人』として定義しました」

――社内には浸透しましたか。

「社員に教わることばかりですが、企業理念を小冊子にした後に、『これができて配ったら終わりじゃなくて、まず社員と直接会話をしてほしい。そうしないと浸透しないですよ』とプロジェクトメンバーに言われました。それから1年ぐらいかけて全社員と語り合う懇談の場『PI(ぴあアイデンティティ)サロン』を始めました。10~20人のグループごとに、弁当を食べながら話して、終わったら近所の居酒屋に行ったりして、一気に距離が縮まりました」

「企業理念というぶれない軸をつくったことが、業容が変わるなかで必要なことでした。インターネット対応や雑誌『ぴあ』の休刊など、会社の業容の変化とともに組織のあり方も変わりますが、そのときにぶれない軸を持っていたから今があると思っています」

――人事制度にも反映されているのでしょうか。

「現場での職能評価制度や採用でも基準になっています。『ぴあ人』を定義しましたが、そういう気持ちで熱意を持って仕事に当たれているか。技能スキルが上がっていくと同時に、意識のレベルも上がっていかないといけない。目線を上げて仕事に対応してほしいと考えています」

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