危機で知った「任せて任せず」 ぴあ社長のくじけぬ魂ぴあ 矢内広社長(上)

――チケット参入は吉と出たわけですが、その足をすくわれるような試練もありました。2008年3月期にオンラインチケットのシステム障害に伴う売り上げの急減で最終赤字を計上しました。

「経営の難しさを本当に実感した出来事でした。改修作業で取り扱うチケットの削減を余儀なくされ、資金繰りが悪化。このままでは債務超過になりかねないとして、先回りをしてリストラを実施しました。財務面では凸版印刷やセブン&アイ・ホールディングスへの第三者割当増資を決断しました」

経営の立て直しで学んだ、諦めない心

1984年、チケットぴあ開始を発表した記者会見(中央が本人)=ぴあ提供

「最も歯がゆかったのは、結局、私はシステムについては何も知らなかったので、どうしたらいいのかわからなかったということです。権限委譲も必要なことで任せていたのですが、チケットが収益の柱になっているぴあにとってITは根幹になってきているから避けて通れない。私がシステムを勉強しても限りがありますから基本的には任せるんですが、任せきりにしてはいけなかった」

――「任せるけど任せない」というのはどういうことでしょうか。

「松下幸之助さんが残した言葉『任せて任せず』がオリジナルです。当時、社外取締役として招いた、元松下電器産業(現パナソニック)副社長の佐久間●(日の下に舛)二さんから教わりました。自分の専門外でわからないことも当然ありますが、ビジネスを進めるときには、例えばコストがどのぐらいで、どんな効果があって、いつまでにやるべきで、顧客にどんなメリットがあるのかといった基本的な考える枠組みというのはある。その枠組みのところまでは任せないということです」

「私は当時58歳。佐久間さんは62歳で松下の副社長からWOWOWの社長になって、債務超過の状態から経営を立て直しました。『矢内さんは若いんだから、必ず方法はあるんだ』と随分、励まされました。どんな逆境でも諦めないことを教えられました」

「私は新しいことをやろうとするときに、これは将来どうしても必要なことだという強い信念があれば、周囲がどんなに反対しても諦めずに説得して突き進んできました。一方で、会社が赤字になって立て直すというのは創業30年以上たって初めての経験でした。新しいことをやろうとするときとは、また違った性質の諦めない心というか、不屈の精神を学びましたね」

――11年には自ら始めた雑誌「ぴあ」を休刊しました。

「当時も雑誌はぎりぎり赤字ではなかったんですが、インターネットが主流の現代において、この先また右肩上がりに戻ることはないだろうと考えました。悪くなってからの判断だと、マイナスが大きくなるかもしれない。多少余力のある時期に決断しようと思っていました」

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