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オリックス・リビングの森川悦明社長

オリックス・リビングの森川悦明社長

「福祉を勉強しないまま、介護の世界に入ってしまった」。老人ホーム運営を手がけるオリックス・リビング(東京・港)の森川悦明社長(59)は苦笑する。その「素人」の発想こそが、「暮らし重視の老人ホーム」を実現するという同社のビジネスモデルにつながった。様々な壁を乗り越える原動力は、多くの人との出会いだったという。(前回の記事は「不動産バブル超え介護の道へ オリックス系社長の原点」)

「車椅子社長」春山満氏との出会い

2000年初め、西洋環境開発からオリックスに転じた森川氏は、オリックス・リアルエステート(現在のオリックス不動産)の運営事業部副部長に就いた。期待されたのは新事業の創出。大分の別府温泉にある杉乃井ホテルの再建や、PFI(民間資本による社会資本整備)方式で開業した新江ノ島水族館(神奈川県藤沢市)などとともに、関わった事業の一つが老人ホームだった。

きっかけとなったのは「車椅子社長」として知られた春山満氏との出会いだ。介護・医療の商品開発や、コンサルタントとして活躍した春山氏は、自身も進行性の筋ジストロフィーと闘っていた。「高齢者の尊厳を守る介護サービスと住まいが、これからの日本には必要になる」。春山氏が車椅子から眼光鋭く投げかけた助言が、森川氏を動かした。

ちょうど介護保険制度がスタートして間もない時期だった。森川氏は横浜市瀬谷区でオリックスが中心となって開発した「マークスプリングス」という戸建てとマンションからなる住宅地で、老人ホームの開設を提案した。

ところが、社内の販売サイドからの反発は強かった。「老人ホームはイメージがよくない」というのが理由だ。危なくないか、臭いの問題はないか、住宅地としてのイメージが落ちないか。そんな反対論ばかりが上がってくる。

「絶対にいける」と、森川氏は説得を重ねた。老いた両親や将来の自分たちのために、家のそばに老人ホームがある環境への潜在的なニーズは大きいはずだ。施設があれば、敷地内に開設するクリニックの収入増にもつながると利益面のメリットも説いて回った。

森川氏の熱意に販売側も折れ、老人ホームの運営を担当する社会福祉法人も決まり、オリックスが初めて手がけた老人ホームは03年に誕生した。

読みは当たった。当初、販売サイドがマークスプリングスへの入居を想定していたのは、これから子育てをする若い世代が中心だった。しかし、ふたを開けてみると、定年を間近に控えた世代が多く入居したのだ。

「こんな街が欲しかった」。50歳代半ばの世代から、そんな声が寄せられた。「老人ホームを併設したことで、新しい需要を掘り起こせた」と手応えを感じた。

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