首都圏の中古マンションは2015年初めごろから在庫が積み上がり、現時点で08年12月以降、最多となっています。こうした状況にもかかわらず、成約単価は13年以降、上昇を続けてきました。要因の一つは異次元緩和による住宅ローン金利の低下です。金利が下がることで、元本と利息の総返済額が同じでも借りられる金額が増え、結果として価格が上昇し続けたのです。これ以上の金融緩和は難しいとみられる中、在庫がここまで積みあがっている状況で、今後の中古マンション市場はどのように変わっていくのでしょうか?
在庫は急激には増えていない
グラフAにあるようにここ数年、在庫は増加してきたのですが、一方で取引件数も増えています。13年初頭の月間平均取引件数は2700件程度で、その後件数は上昇。17年夏ごろには3100件程度まで達し、その後は3080件程度で推移しています。
在庫以上に取引件数が増えると、価格が上昇する可能性もありそうです。そこで各月の在庫件数を月間平均取引件数(各月の過去1年間の月間平均取引件数)で割った数値(在庫倍率)を調べてみることにしました。在庫倍率は取引1件あたりの在庫件数を示すもので、その時々の需要(取引件数)に対し、供給(在庫倍率)がどの程度の水準だったかを示す指標となります。
グラフBからわかるように、現時点の在庫倍率は08年12月以降でみると、最大値にはなっておらず、急激に在庫倍率が上昇しているわけでもないのです。
ここ半年の成約単価は横ばい傾向
現在の在庫倍率は約15倍で、直近1年の平均値は14.9倍となっています。一方、08年12月以降の平均在庫倍率は14.1倍でした。つまり、ここ10年の平均在庫倍率より現在の在庫倍率のほうががやや高くなっているのがここ1年の状況なのです。