実際、ここ半年の成約単価の推移は上下動はあるものの横ばい傾向で、平均成約単価はおおむね1平方メートルあたり51.5万円程度です。このことから、08年12月以降の平均在庫倍率よりも直近1年の平均在庫倍率が上回ると、価格は横ばいに変化する可能性があるといえそうです。

なお、地域ごとに18年以降と直近の平均在庫倍率を調べてみると以下のようになりました。

首都圏:東京都・埼玉県・千葉県・神奈川県
都心3区:千代田区、中央区、港区
城東地区:台東区・江東区・江戸川区・墨田区・葛飾区・足立区・荒川区
城南地区:品川区・目黒区・世田谷区・大田区
城西地区:新宿区・渋谷区・杉並区・中野区
城北地区:文京区・豊島区・北区・板橋区・練馬区

この表で乖離(かいり)率がプラスになっているのは、08年以降の平均在庫倍率より直近1年の平均在庫倍率のほうが高い、すなわち価格調整がはじまりつつあるエリアです。一方、乖離率がマイナスのエリアはまだ価格調整が始まらないと思われます。ちなみに、乖離率がマイナスの東京23区、都心3区、城南地区の3つのエリアは依然として価格は上昇しており、それ以外の地域はここ半年、おおむね横ばい傾向となっていました。

景気の腰折れ要因、枚挙にいとまなく

13年以降の中古マンション市場は、異次元緩和による金利の低下で物件を購入しやすい状況が続いたこと、そして好景気が続いてきたことから、取引件数が増えて活況を呈してきたといえます。

一方で今後、異次元緩和の出口戦略の実行に伴う金利上昇や景気後退が明確になれば、取引件数の減少、つまり在庫倍率の上昇に直結します。首都圏の在庫倍率が11年から12年ころの水準まで増加するとすれば、当然ながら成約価格も低下するはずです。

日本の財政事情やデフレ脱却という目的からすると、金融緩和は向こう数年間は現状を維持せざるを得ないと思われますので、金利上昇に伴う価格下落というシナリオは当面の間はないのではないでしょうか。

一方、景気後退については様々な不安要素が出てきています。この好景気がいつまで続くのかという不安感に加え、消費増税や米中の貿易戦争による経済活動の低下、円高リスクといった景気の腰折れ要因は枚挙にいとまがありません。

各地域の動向に注意

仮に来年、景気後退局面を迎える事態になれば、価格調整が始まる可能性は大きいと思います。もちろん、エリアによって在庫倍率の度合いが異なるので、価格調整が始まるエリアとそうでないエリアに分かれていくと思います。各地域の動向に目を配っておく必要がありそうです。

田中歩
1991年三菱信託銀行(現・三菱UFJ信託銀行)入行。企業不動産・相続不動産コンサルティングなどを切り口に不動産売買・活用・ファイナンスなどの業務に17年間従事。その後独立し、ライフシミュレーション付き住宅購入サポート、ホームインスペクション(住宅診断)付き住宅売買コンサルティング仲介などを提供。2014年11月から個人向け不動産コンサルティング・ホームインスペクションなどのサービスを提供する「さくら事務所」に参画。