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インバウンド最前線

横浜を素通りする外国人 W杯メイン会場でも宿泊せず

2018/12/4 日本経済新聞 朝刊

横浜の異国情緒は日本人観光客には魅力的だが……(赤レンガ倉庫)

2019年9~11月に開かれるラグビーワールドカップ(W杯)日本大会。決勝戦を含む7試合は国内最大の横浜総合競技場(横浜市)で開催される。実質的なメイン会場のお膝元となる横浜市では様々な機運醸成イベントが続いているが、ある関係者が自嘲気味に話していたのは「結局、宿泊先は東京なんですよ」だった。

試しに海外の旅行会社の観戦パッケージツアーのサイトを見ると、宿泊予定地で圧倒的に多いのが「東京」だ。注目カードが多い横浜も紹介されているが「鉄道で東京まで20分」という表記が目につく。会場に近い新横浜駅から、新幹線を使って東京に移動するのが前提になっている。

横浜市内には開幕までのカウントダウンボードが設置されている(ランドマークタワー、11月20日)

確かに首都圏の電車事情に疎い外国人にとって、在来線を乗り継いで横浜市の中心部を訪れるより、新幹線で移動するほうが楽だろう。横浜に呼び込むにはそれ相応の魅力がないといけない。

そう思って一連のサイトの日本国内のおすすめスポットを見ると「浅草」などに続いて、試合会場とは関係ない「富士山」「京都」「広島」などの地名が並ぶ。外国人が好む日本観光のゴールデンルートであり、横浜は素通りされている。

これは今に始まった問題ではない。「横浜には訪日外国人客(インバウンド)がやって来ない。東京の一部と思われているからだ」と話す経済関係者は多い。そして多くはこう続ける。「あんまり騒がしくなるのも困るけどね」

横浜の異国情緒は日本人観光客にとって魅力があるが、外国人客には必ずしもそうではないといわれる。これまでは「内向き」で困らなかったが、人口減少時代を見据えると海外客へのアピールも必要。そのきっかけが2019年ラグビーW杯であり、20年東京五輪のはずだった。

横浜市や神奈川県、関係団体は英国やオーストラリアなど、多くのファンが訪れそうな国々への働きかけを進めている。協力を惜しまない地元企業もある。しかし、横浜観光の構造問題が変化する兆しは見えない。

「個々の局面では健闘したが残念な結果に。『もう少しできたはず』という印象をぬぐえなかった」

11月17日のラグビー日本代表対イングランド代表戦の感想ではない。W杯の後、横浜がこんな雰囲気にならないために残された時間は短い。

(横浜支局長 伊藤浩昭)

[日本経済新聞朝刊2018年11月22日付を再構成]

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