40代からの体調不良 漢方で「気・血・水」整え改善
更年期を快適に過ごす(中)
倦怠感、冷え、イライラ、のぼせといった、40代に入ってからの不調に漢方薬が適していることは前回「40代からのイライラ・だるさ・発汗… 漢方薬に効用」で説明した。2回目は、漢方薬選びの基本的な考え方を紹介する。
◇ ◇ ◇
生命エネルギーの「気(き)」、血液や栄養を表す「血(けつ)」、リンパ液など血液以外の体液を指す「水(すい)」。漢方では、これら3つの要素が体内を常に巡っており、その流れに異常が生じたとき、不調や病気が起こると考えられている。
例えば気が逆流する「気逆(きぎゃく)」ではのぼせや発汗が、血の流れが悪い「お血(けつ)」では肩こりや便秘が、水が滞る「水毒(すいどく)」ではむくみやめまいなどが現れる。ほかにもタイプがあるので、どれに当てはまるか確認しよう。
「一般に閉経へと向かう更年期の入り口では、月経異常などのお血になる人が多い。気血水は互いに影響し合っているので、血の異常から気や水のバランスも崩れ、様々な更年期症状を招きやすい」と青山杵渕クリニックの杵渕彰所長。
漢方薬を選ぶ際は、気血水のどこに原因があるかを見極めると同時に、「虚証(きょしょう)」「実証(じっしょう)」といった体質も考慮する。「虚証は一般にカゼを引きやすく、引くと治りにくい人。実証は風邪を引きにくく、体力に自信がある人。中間証はその中間」と慶應義塾大学病院漢方医学センターの堀場裕子医局長。症状が同じでも、体質を示す「証」によって、どの漢方薬が効くかが異なるわけだ。
例えば、婦人科3大処方と呼ばれる加味逍遥散(かみしょうようさん)、当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)、桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)。更年期症状によく用いられる漢方薬だが、働きや対象となる人は異なる。加味逍遥散は気血水すべてに効く生薬を含み、やや虚証からやや実証まで幅広く使える。イライラやうつ、不安、不眠などの精神症状に効果的だ。当帰芍薬散は水毒とお血を改善し、虚証の人の頭痛やめまい、冷え症に効く。「もともと月経が不順で、経血量が少ない人に向く傾向がある」と堀場医局長。桂枝茯苓丸はお血に効き、中間証から実証の人の肩こりやのぼせ、シミ、静脈瘤などを改善する。「以前から月経痛がひどく、経血量が多い人に適している」(堀場医局長)。
漢方医学研究所青山杵渕クリニック(東京都港区)所長。1972年、岩手医科大学卒業。都立松沢病院、日中友好会館クリニック所長などを経て、2001年から現職。専門は漢方全般、精神科。日本東洋医学会専門医、日本精神神経学会専門医。
慶應義塾大学病院(東京都新宿区)漢方医学センター医局長・助教。2003年、杏林大学医学部卒業。慶應義塾大学医学部産婦人科を経て、11年から漢方医学センター。専門は漢方全般、産婦人科。日本産科婦人科学会専門医、日本東洋医学会専門医・指導医。
(ライター 佐田節子)
[日経ヘルス2018年12月号の記事を再構成]
健康や暮らしに役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。