40代からのイライラ・だるさ・発汗… 漢方薬に効用
更年期を快適に過ごす(上)
40代に入ってから、いろいろな不調が出てきた。更年期が始まったみたい……。そんなとき、ぜひ活用したいのが「漢方薬」。種類も多く、体だけでなく心にも効く。1回目は、こうした不調に対する漢方治療のメリットなどを解説する。
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倦怠感、肩こり、物忘れ、発汗、冷え、腰痛、イライラ、のぼせ……。更年期になると、検査をしても異常はないのに、こんな"なんとなく不調"に悩まされる人が多くなる。
そもそも更年期は、卵巣機能が低下して女性ホルモンが激減する時期。個人差はあるが、40代後半から始まり、閉経を挟んだ前後10年間を指す。思春期以降ずっと女性の体を支えていた女性ホルモンがなくなるため、月経不順をはじめ様々な不調が起こりやすい。年齢的にも家庭や職場などでのストレスが多く、症状悪化に拍車をかける。
このような更年期の不調改善に役立つのが、漢方だ。慶應義塾大学病院漢方医学センターの堀場裕子医局長は、「更年期にはいくつもの症状が重なって現れやすい。漢方なら、1つの漢方薬で複数の症状が一度によくなることもある」と話す。
心の不調にも有効だ。「体だけでなく、イライラや不安、うつ、無気力、不眠などの精神症状にも効く」と青山杵渕クリニックの杵渕彰所長は言う。
例えば、当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)は更年期によく用いられる代表的な漢方薬。頭痛やうつ症状に対する改善効果は、足りなくなった女性ホルモンを補う「ホルモン補充療法(HRT)」よりも高かったとの報告も。
もっとも、症状によってはHRTのほうがより効果的な場合もある。「急にのぼせるホットフラッシュには、HRTのほうが速く効く」と堀場医局長。症状に合わせて、HRTと漢方をうまく使い分けるといい。両方を一緒に使うこともある。
また、つらい症状が更年期症状なのか、疲れやストレスなどで自律神経が乱れた結果なのか、原因がはっきりしない場合でも、漢方治療は可能。漢方は症状に対して行う治療だからだ。「もしかして更年期?」と不安になっている30代後半から40代前半の女性にも、漢方は頼りになる存在だ。
慶應義塾大学病院(東京都新宿区)漢方医学センター医局長・助教。2003年、杏林大学医学部卒業。慶應義塾大学医学部産婦人科を経て、11年から漢方医学センター。専門は漢方全般、産婦人科。日本産科婦人科学会専門医、日本東洋医学会専門医・指導医。
漢方医学研究所青山杵渕クリニック(東京都港区)所長。1972年、岩手医科大学卒業。都立松沢病院、日中友好会館クリニック所長などを経て、2001年から現職。専門は漢方全般、精神科。日本東洋医学会専門医、日本精神神経学会専門医。
(ライター 佐田節子)
[日経ヘルス2018年12月号の記事を再構成]
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