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2020フォーラム

東京はまだまだ進化する 五輪で弾み、文化も安全も 第4回日経2020フォーラム、三井不動産・菰田社長ら講演

2018/11/27 日本経済新聞 朝刊

パネル討論では「2020年を起点とするTOKYO進化論」をテーマに、経営コンサルタントとして各方面で提言しているA.T.カーニー日本法人会長の梅沢高明氏、東京地下鉄常務取締役で鉄道本部長の野焼計史氏、東京体育館などが五輪会場となる渋谷区長の長谷部健氏、ロンドン、リオデジャネイロ両五輪に出場した元新体操日本代表の畠山愛理氏が討論した。司会は小谷真生子キャスターが務めた。

A.T.カーニー日本法人の梅沢高明会長

小谷氏 13年に五輪開催が決定してから5年、東京も進化していると思いますがどうですか。

梅沢氏 都市の国際競争力を示すランキングを見ると、例えば英国で人気のライフスタイル誌「モノクル」で東京は2位です。この雑誌はクリエーティブな人たちが読んでいる。つまり東京は文化人に評価が高いです。ハイテクと伝統の価値観のバランスが好感を持たれているようです。食の多様性や鉄道の時間に正確な運行、犯罪率の低さも評価が高い。これらは今後、東京をさらに再開発していくうえでも大切になるキーワードだと思います。

東京都渋谷区の長谷部健区長

畠山氏 現役時代に20カ国以上に試合や合宿で行きましたが、いつも「やっぱり東京って素晴らしいな」と感じていました。他の国の選手からも「日本に行きたい」という声を多く聞いてきました。

長谷部氏 日本のイメージも多様化し、今では渋谷駅前のスクランブル交差点が東京の象徴のようにSNSでも投稿されています。年間1300万人強の外国人が東京を訪れ、そのうち6割が渋谷に来ています。ただ残念なことに主な滞在時間は午後2時~6時で、消費にはあまりつながっていない。ホテルが少ないのも理由で、政策的にも取り組んでいきたいと思っています。

元新体操日本代表の畠山愛理氏

小谷氏 最近、ナイトタイムエコノミーが海外でも注目されていますね。

梅沢氏 ロンドンが「夜間GDP」という数字を出していて3兆9000億円あるといいます。東京の経済規模なら5兆円あってもいい。ただ数兆円レベルとなると、ハロウィーンみたいなイベント頼みではだめで、常設のイベントコンテンツをそろえられるか。そして食事やホテルも色々な種類と価格帯があり、さらに交通システムもしっかり連結して初めて「面」としての夜間経済となっていくのだと思います。

東京地下鉄の野焼計史常務

野焼氏 昔から「なぜロンドンやニューヨークの地下鉄は24時間運転しているのに東京はやらないのか」と言われるのですが、終電から始発までの3時間半ほどの間にメンテナンスや工事をしています。夜間交通に関していうと、バスやタクシーなど様々な交通機関と連携させるという議論が必要だと思います。

小谷氏 訪日外国人やバリアフリー対応も欠かせないですね。

司会の小谷真生子キャスター

野焼氏 多言語表示の充実を図っていますし、車両内Wi―Fiも全保有車両で完了予定です。駅のナンバリングはわかりやすいと非常に好評です。バリアフリーについても駅の入り口からホームまでエレベーターで移動できるルート整備を進め、多機能トイレは今年度中には全駅に100%完備になります。

長谷部氏 地方行政の大きな柱は教育と福祉です。その点からもパラリンピックは日本人の福祉に対する考え方が変わる機会になると思っています。パラリンピックを成功させられるかどうかが成熟都市としての成否の分かれ目。レガシーとして「心のバリアフリー」が実現できる大きなチャンスです。

畠山氏 海外の経験からも日本はバリアフリーが進んでいると思います。パラリンピックを契機にさらに加速するといいですね。

◇   ◇   ◇

<議論を終えて>

五輪・パラリンピックは都市を舞台に開催される世界最大のホームパーティーに例えられる。ホストシティは世界中から訪れるゲストに誇るかのように、街中を美しく飾り立て、さまざまな施設を新調して最先端の機能を導入する。みえを張ってしばしば税金の無駄遣いになってしまうが、民間企業もいっせいに莫大な投資を進める。そして都市は一気に進化する。

ホームドア設置や多機能トイレにバリアフリーの動線整備、案内表示の多言語対応など、東京地下鉄の取り組みを聞けば、20年大会の存在がどれほど企業の投資を促しているかが分かる。街では新築や改装の工事が目立つ。地方から「なぜ、東京ばかりが」という不満も聞こえてきそうだが、東京では今、都市のリニューアルが進んでいる。

ロンドンは12年大会を機に都市としての国際競争力を格段にアップした。東京もそれに続くことだろう。だが、20年に向けた投資を未来につなげるためには、一人ひとりの「心のバリアフリー」が不可欠だ。

訪日外国人の急増による街の変化に抵抗を感じる人も少なくない。日本らしい謙虚さや寛容さを持って新しい仲間をポジティブに受け入れたい。伝統的な文化や価値観で変化を包み込み、新たな首都東京を創出する。

真のダイバーシティーの実現が求められている。

(編集委員 北川和徳)

[日本経済新聞朝刊2018年11月22日付]

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