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ピアニスト田部京子 CDデビュー25年のシューベルト

2018/11/24

ピアニストの田部京子氏がCDデビュー25周年を迎え、12月に記念公演を開く。ショパン作品集から始まり、計30枚以上、集成盤なども含め計35タイトルを出し、多くが国内外で特選盤になった。特に世界で高く評価されるシューベルト作品のCDを中心に、レコーディングを振り返る。

「ラインアップを見ると、こんなにリリースしてきたのかと自分でも驚く。CDとコンサートの両輪で充実した25年間だった」。田部氏は年1枚以上のペースでCD録音をしてきた音楽活動を語り始めた。1992年にデビュー公演を開き、翌93年に最初のCD「幻想ポロネーズ~ショパン・リサイタル」(発売元:日本コロムビア)を出した。

本質が凝縮されたシューベルト最晩年の作品

「自分の希望がかなったのは3枚目から」と言う。それが94年発売の「シューベルト:ピアノ・ソナタ第21番」(同)。「これを機にシューベルトの後期のピアノ作品をシリーズのように出すことができた。私のCDの主軸になっている」。シューベルト作品シリーズは5枚に上る。

シューベルト「ピアノソナタ第21番」を弾く田部京子氏(東京都稲城市のiプラザホール)

田部氏のCDタイトルを見渡すとモーツァルトやベートーベンからシューマン、ブラームスまでドイツ語圏の古典派とロマン派の作品が大半を占める。中でもシューベルト作品の比重が高い。しかし「10代の頃はシューベルトが苦手だった」と話す。「音楽は自分流の味付けをするものと思っていた。シューベルトは旋律が美しいけれど、アプローチの仕方が分からなかった」

転機はオランダのピアニスト、ヴィレム・ブロンズ氏の来日公演で「第21番」を聴いたことだ。「何も味付けをしない弾き方だった。降臨するものに身を委ねる演奏。そこからシューベルト像が広がった。語りかけてくるものに耳を澄ませる。親しい友人に心情を吐露しているところを聞き逃さない。それだけで音楽になると分かった」

「第21番」は亡くなる2カ月前に作曲したシューベルト最晩年の作品。「20代の私はなぜか作曲家の晩年にひかれていた」。シューベルトは31歳の若さで没したが「晩年には違いない。その作品には作曲家の本質が凝縮され、人生の歩みがすべて刻まれている」。

人生を重ねるにつれて広がる共感の幅

田部氏は2011年に名盤「ブラームス:後期ピアノ作品集」(同)、15年に「ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第30番、第31番、第32番」(発売元:オクタヴィア・レコード)と各作曲家の晩年の作品集を出した。「ブラームスの晩年の曲は枯淡の境地といわれるが、過ぎ去った青春の輝きへの憧れも込められている」と指摘する。

12月19日には「CDデビュー25周年記念ピアノ・リサイタル」を浜離宮朝日ホール(東京・中央)で開く。ここでシューベルトの「第21番」を弾く予定だ。すでに8月には同曲の再度のレコーディングも終えている。「人生を重ねるにつれて共感の幅が広がる」と彼女は言う。さすらい人のように去っていくシューベルトの語りかけが、深い美しさをもって聞こえてくる。

(映像報道部シニア・エディター 池上輝彦)

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