ユニクロ・ナイキ… ゆとり世代は定番とコスパ重視
約3万人を対象としたインターネット調査により、日本人の消費生活の実態に迫る。フォーカスしたのは20代後半の男性で、平均像を浮き彫りにするため年収300万円以上400万円未満を対象とした。「ゆとり世代」「さとり世代」と呼ばれる彼らの嗜好とは?
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約3万人の調査対象者を擁するブランドデータバンク。2018年6月の調査結果から、25~29歳で、個人年収が300万円以上、400万円未満の男性に着目。約3万人のうち対象となったのは307人で、個人年収の平均が323万円、同居家族(親や配偶者など)を含めた世帯年収の平均は551万円だった。
1989~93年生まれのこの世代は、生まれてすぐにバブルが崩壊し、平成不況下で育った。つまり、人生でこれまで1度も好景気を味わったことがない人々だ。89年に導入された消費税は、97年には5%に増税された。現在20代後半の人々はそんな不況が続く平成時代に育ち、その後、リーマン・ショックや就職氷河期も経験してきた。
「自分で考えて動くよりも、指示を待ったほうが楽」「そこそこの生活ができればいい」「コスパ重視で楽しみたい」などを特徴とする「ゆとり世代」「さとり世代」に属するこの世代の若者たちは、不況が恒常的に続く社会で育まれた価値観を、消費スタイルに反映している。
定番ブランドのオンパレード
調査結果からファッションの項目を見てみると「持っていてお気に入りの洋服ブランド」は「ユニクロ」「ジーユー」「ビームス」といったスタンダードなブランドが並ぶ。中でもユニクロ人気は圧倒的だ。
靴ブランドなら「ナイキ」「アディダス」「ニューバランス」と、足元は基本的にはスニーカー。腕時計は「カシオ」「セイコー」「シチズン」と国産ブランドが支持を集めている。腕時計でトップのカシオは、全体と比べて、この層のスコア(その商品やブランドを選んだ割合)が高いブランドだ。耐久性に優れた「Gショック」や数千円で買える「チープカシオ」と呼ばれるカジュアルな腕時計は、やはりこうした若年層に支持されているのだ。
「利用しているスポーツ・ファッションショップ」のベスト3のうち、2つはスポーツ系ショップ。スニーカーで活動する彼らは、価格と耐久性のバランスが良いスポーツアイテムを、普段の着こなしにも取り入れていると考えられる。
ファッションに無頓着とは言い切れないが、選ぶブランドは定番で、スポーツ寄りのカジュアル。コスパ重視の彼らの価値観が、反映されているようだ。
こだわりが見えるのは洗顔料
食品分野でスコアが高いものをまとめると、「カップヌードル」や「スーパーカップ1.5倍ラーメン」、菓子は「じゃがりこ」「ポテトチップス」、飲み物は「い・ろ・は・す 天然水」「お~いお茶 緑茶」「コカ・コーラ」。食のジャンルのベスト3は、どれも定番と言えるものばかりで、新しいものを試してみたいという気持ちはあまり伝わってこない。
男性洗顔料のトップ3は「メンズビオレ」「ギャツビー」「オキシー」。どれも、他の世代よりもこの世代で高いスコアを記録している。価格に大差はなく、高額なものはランキングに出てこない。価格を抑えながら、自分に合ったものを使いたいというこだわりがうかがえる。
当たりさわりのない映画や漫画
エンターテインメントは、映画では「スター・ウォーズ」「ハリー・ポッター」、アニメ・漫画では「ONE PIECE」「ドラゴンボール」のスコアが高いが、意外性はない。「情報アプリ」「グルメ・料理・旅行サイト」「SNS・ブログ・コミュニケーションサイト/アプリ」もこの世代特有の銘柄は少なく、平凡な結果になっている。
海外旅行先の2位にグアムが選ばれているところにも、この世代特有のコスパ重視感がうかがえる。10年前の20代後半男性なら、ヨーロッパなどがランクインしたのではないだろうか。今の若い男性は、海外にもあまり興味を持たないと聞く。
「自動車メーカー・ブランド」や「家電メーカー」の結果を見ても、実に普通。機能優先で、メーカーなどでの差別化は、あまり考えていないようだ。
同じ金額なら自慢できるものを
リアリストな一方で、価値観に関する調査結果では、「ブランドものを持つのが好きだ」「国産よりも、海外のものに憧れる」「先進性の高いものに引かれる」という項目の数値が、全世代平均と比べて高い。同じ金額を払うなら、自慢できるようなものを持ちたいという意識もあるにはあるようだ。
生き方に関する価値観では「他人が羨むようなものを一つでも多く手に入れたいと思う」の数値が高かった。さらに「今の自分の社会的地位を維持し、さらに高めることに力を注ぎたい」「人の上に立つリーダーになりたいと思う」といった価値観も持ち合わせる。とはいえ、これらの調査結果はすべて、同世代の年収400万円以上の男性に比べて低くなっている。欲望の弱さは、年収の差とも関係がありそうだ。
[日経クロストレンド2018年10月29日の記事を基に再構成]
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